第1話 今世はもういいかなと思った
初投稿です。
異世界ものが大好きなので、ヌルヌルゆるゆる書こうと思います。
16歳の冬、俺以外の家族が皆殺しにされた。
部活で家にいなかった俺だけが、無事だった。
父も母も優しい人だった。妹は本当に可愛く溺愛していたといって良かった。
帰ってきたら、静かな玄関。
リビングに入ると匂いが変わった。
人の家の生活感のある匂いとはまるで違う、錆びた鉄の匂いが充満していた。
いつものリビングの景色にあったはずの白い壁紙。
まだらに染まった赤い飛沫。
そこに3人がいた。
3人といっていいかわからないほど顔も見えなかったが。
俺は、その静寂な空間の邪魔にならないように静かに荷物を置いた。
葬式が終わりしばらくたった頃だった。
突然、玄関のチャイムが鳴った。
「真田 諭さんですね」
そこには警官が1名たっていた。
そして
「あなたには一家3人の殺害容疑がかかっています。
署までご同行願います。」
と
「は?いや、何いっているんですか?
何の根拠があって・・・いや大体皆が殺された時は俺はいなかったんだぞ!」
「そのあたりも含めて署で説明しますよ。
とりあえず任意なので断ってもいいですが、いずれ強制になると思いますよ」
この警官は何を言っているのだ?
戸惑う俺を無視するように、説明を続け同行を求めた。
「わかりました。とにかく何かを誤解されているようなのでちゃんと弁解させてもらいますよ。」
「ありがとうございます。ではこちらへ。」
警官は淡々と喋っていたが、最後だけ少し笑ったような気がした。
警察署についてから50日がたった。
俺はあれから連日事情聴取を受けていた。
明らかに俺を犯人を決めつけたような取り調べ。
殺害時間、物証、動機
どれをとってもすべて俺を犯人に結びつけるものばかり。
殺害時間は俺がいない時間帯だが、暖房がついていた為実際はもっと時間がずれていたこと。
物証は、凶器とされた包丁に俺の指紋しかついてないこと。
そして動機は殺害された日の前日に両親と口論したことがきっかけであること。
しかし口論といっても進路のことで少し言い合いになった程度だ。
確かに証拠だけ並べられたら、少し怪しいかなと思うかもしれないが、取り調べは俺が犯人と決めつけていたものだった。
そして100日がたったころ
「おい、取り調べはとりあえず終わりだ。とりあえずだがな。
一旦家に帰っていいぞ」
急に独房の鍵を開けられ返されることになった。
「え?な、なんで」
「あ?そこが気に入ったなら、もっと居させてやってもいいんだぞ」
「い、いや・・・そんなことは」
訳がわからないことは今に始まったことではないが、流れについて行けなかった。
そして、特になんの説明も無く家に帰らされることになった。
家につくと、玄関の扉には
「人殺し」の張り紙がびっしりと貼られていた。
なんだろう、このありきたりな状況は。まあどうでもいいか。
自分の身に降りかかっていることではあるが、どこか他人事のように感じた。
そして、家のなかに入り、風呂に入り、ボロボロになった洋服を着替えた。
「風呂も100日ぶりか・・・静かだな」
俺はテレビをつけ、水をのみ一息ついて、ベランダから景色を眺めた。
俺の家はマンションの10階だったのでよく景色が見えた。
「一体何なんだろうな、俺の人生は」
そこにテレビのニュースが聞こえてきた
「こちら一家殺害をした真田 諭容疑者の家の前です。本日取り調べを終え家にいると思われますので、早速取材したいと思います」
そこには鬼の首をいまから取りに行くかのようなテンションでリポートしている女性が映っていた。
「なにが、殺害した、だよ。容疑者であって被疑者じゃないだろうよ」
聞こえるはずもない文句をテレビに投げかける。
ふと下をみると、先ほどテレビに映っていた取材陣とみられる集団がいた。
「あ!真田容疑者です!こちらをみています。今いったいどういう気持ちで家に居るのでしょうか!」
それはこっちがききたい
正直、なぜ俺にこれだけの疑いが向いているのかわからないがそれを問い詰める気力ももう無かった。
リポーターの声も何も感じはしない。
それに例え容疑が晴れても、もう同じ生活には二度と戻れないのだから。
「これからどうするか・・・いやどうにもならないか」
そう呟くと俺は、ベランダから飛び降りた。