カタカナ用語バンザイ
オフィスの席替えが行われると、ちょっと窓側に近づく俺の席。
「よろしくね、エイサル主任」とリリー。
「うん? リリー、また近くなのか、よろしく」
「何言ってるのっ!? 私は、あなたの部下になってんですけど?」
「はひっ!? 何、それ…」
リリーと呼び捨てにしてるが、それはリリーがそうしてくれと言っているから、同期のリリーは勿論ハーフエルフだけあって年上なのである。
ハーフエルフだけあって、顔は人間の女性と比べものにならないぐらい綺麗なのだ。俺の脳内モザイクを解除したら会話もできないぐらいだ。
「軽く今日の予定を教えて、エイサル主任」
「エイサルでお願いします」
「じゃ、主任で」
「ヴェッェラーゼ男爵の件が二日後に控えているため、別件の調査は保留状態だ。今日も報告書作成が中心で、午後に2件ほど抜き打ち検査があるぐらいだな」
「どこの抜き打ち?」
「えーっと。小さい店だよ。鍛冶屋ボコトスとフレース絨毯店だ」
「ふーん。それ私も同行していい?」
「えっ!? 暇なの?」
「馬鹿ね。若くして主任になったあなたのお手並みを拝見するのっ!!」
「は、はひぃ…」
今日のリリーはご機嫌斜めだな…。やっぱり先に主任になったのが気に入らないのだろうか?
むー…報告書、つまんねー。でもこういうのも重要なんだよな。
<コール:フィードバック>
計画立案、実践行動に関する反省点を洗い出し記憶する。
しかしKYが、カタカナ用語だと気付くまで大変だったよな。気付いた後も嫌な汗が全身に出たけどな。でもスキルに説明が出てくるのは助かる。問題は数が多すぎて使いこなせていないという点だ。
「主任、そろそろお昼ですけど、約束覚えていますか?」
いや…覚えてませんけど? さっぱりですが? 何か?
<コール:リマインド>
ずばり思い出させる効果がある。
なになに? 可愛く髪の毛切ったら、昼食を奢ってね?
チラリとリリーを見るが、まるで髪型かわってないじゃないか…。
「うん、奢りたくなかったから言わなかったけど、リリー髪型可愛くなったね」
「もう主任は…恥ずかしいこと言わないでください」
よかった…リリートラップを切り抜けられた…。女って怖いよね…。