二人の未来に
自宅に帰ると、フラッツとマニーは二人だけの世界で、お互い頬を赤らめている…。
これって恋ってやつなのか?
咳払いをして、俺の存在に気付かせる。
わぁっ、と二人は距離を取り、俺からの報告を待つ。
「マニーの奴隷契約書だ」
ひらひらと契約書を二人に見せると、感激のあまり抱きつて喜んでいる。
俺って…こっちの世界で10歳のとき何してた? こんなイベントあったかな?
親に捨てられ、マークさんに拾われ、自分を売り続け、商人になろうと一大決心し…小便に血が滲むまで働いた…。
ムキーーーーッ!! ゴンっ!! とフラッツの頭に拳を落とす。
「いたたたたぁ…。どうしたんだよ、エイサル…」
「マニーを守るんだろ? 戒めだ」
俺達三人は奴隷商人がいる南東の貧民街に足を運んだ。奴隷の烙印を上書きしてもらうためだ。
「フラッツ…お前は出てろ。それともマニーの裸、もう見たのか?」
「ヘンタイっ! エイサルが…下ネタ言うなんて…今日は変だぞ?」
マニーは両腕で胸を必死に隠し背中を向けていた。俺はエレッドの烙印を上書きして代金を払う。
街の中央まで戻ると、安めのレストランに入り、遅めのランチを食べる。
「マニーに言っておきたいことがある」
改まって言う俺にマニーは緊張した顔で頷く。
「家は…マニーのいた世界とは違って貧乏だ。マニーにとって苦痛でしか無い部分も多いだろう」
マニーは必死に首を振る。
「そんなことは、決してあいません」
「そう言って貰えると助かる」
「私が商売を始められれば、少しは…家計のお役に立てると思います」
「いや、公正取引委員会の身内が商売を始めれば、不正だのと騒ぎ立てる輩が出てくる。マニーたちに商売はさせられないんだ」
「俺は、エイサルの手伝いをするから、マニーは家事とかを…」
「フラッツ。それも駄目だ。良いか、お前たちは来月から学校へ通うんだ。マニーは貴族時代に習ったことばかりでつまらぬかもしれんが…。それでも勉強以外でも良い、多くの何かを学んで欲しい」
フラッツとマニーの顔に溢れんばかりの笑顔が広がる。奴隷になった時点で、何も希望が無かった。でもエイサルが救ってくれた。それなのに…まだ多くの自由を施してくれるのかと…。