リストラ
初の元おっさん主人公です。
チートなノリでおっさんが楽しむ物語にしたいですね。
俺は石橋 高雄45歳の独身で出世コースから外れた老害中の老害と呼ばれる情報システム部のお荷物だ。
そんな俺が社運をかけた製品の売れ行きが思わしくないため、経営戦略会議と呼ばれる意味不明な会議に、同僚たちに騙されて出席していた。
「コモディティ化が進む中、弊社ではシュリンクとカニバリゼーション回避のため販路拡大を目指して、A社とアライアンスを組むことにより製品のブラッシュアップすることがオポチュニティであり、それこそがコアコンピタンスなんですよ」
出世頭の若きエースが自分の担当するプロジェクトの大失敗を巻き返そうと躍起になっていた。
「そこで情シスにもプライオリティを上げてASAPで協力して欲しい。ダイバーシティを実現するためデータマイニングを活用して、ボトルネックな部分があるなら、スクリーニングしゼロベースとしてでもグロースハックを目指すべきなんですよ。ベストプラクティスを知るインフルエンサーである石橋さんをステークホルダーとしてアサインさせてください」
何を言っているのかさっぱりわからんが、俺に全責任を押し付けようとしていることは理解した。
「あのですね。私は情シスですよ? あなたの尻拭いはできません」
出世頭の若きエースは頭を掻きむしりながら叫ぶ。
「今回の失敗は、リスクヘッジを怠った情シスとコンセンサスできなかったこと。だからブレストして情シスにメイクセンスしてもらっているのですよ。情シスはオンスケしかみていない。マーチャントにしろキュレーションしろマネタイズを考慮してもペイできるビジネスモデルをユーザーエクスペリエンスできていればパラダイムシフトの可能性も十分にあったんだ」
「製品を見ましたがOEMですよね。そのまま販売していたら結構儲かっていたと思うのですが?」
「私がローンチした製品を正しくアセスメントするべきです。コストリダクションだってタイトなタスクの中でエンパワーメントした者がいたから、ファクトベースでアカウンタビリティしたのです。ようはバズ・マーケティングですよ、私たちと情シスがパラレルで動けていたら、市場のイニシアチブとオーソライズを独占し、我社の製品がデファクトスタンダードなり得たのですから」
「過去も未来もどうしても、情シスの情報分析が間違ってたとしていのですね」
結局、俺はリストラされる。どうやらやる気がないと判断されたらしい。
月々の手取りなんてバイトで稼いだほうが良いんじゃないか?
そんな会社に未練はないが、生きる気力もない。
どこで、道を間違ったのかなぁ?
友達がいたらもっと…楽しかったのかな…もっと社会に触れられて、視野も広がったのかな…。
飲めない酒をがぶ飲みして、酔って死のうと思っているが、ただ吐き気がするだけで、全然意識ははっきりしている。
このまま、ここから飛び降りても怖いし、痛いんだろうな…。
父ちゃんと母ちゃんはこの世にいない。
あっち行ったら叱ってくれるかなぁ。俺のこと本気で怒ってくれたのって、両親だけだもんな。
ビルの屋上で手すりを乗り越える。「こえぇぇぇっ」呟きながら、一歩前進する。