シングルマザーの事実
「なぜ苦しむんですか? みられたくないものでもあるんですか?」
「あの日あなたは1人でいたと。では普段江坂さんと何を話していましたか」
普段話す事、と言うのはどういう事なのか田中には計り知れない様だった。
「普段とはどういった事でしょうか」
「貴方は江坂さんと仲が良かったと何人かの人が言っています。普段主に何を話してたんですか」
「し、仕事の悩みを……」
田中はすでに力をなくし汗と言う名の水分を絞りようがないてぬぐいのような状態になっていた。
「では質問を変えます。江坂さんと他の人より仲良くしていた際どんな話題で彼女に親近感を抱いたのですか」
「彼女にプライベートについてです。私に色々話してくれまして」
「それは楽しい事ですか悩みですか」
「り、両方です」
「菅原さんは明らかに江坂さんが何かに悩み疲れ切っていたと話していました。何かあなたは他の人にはしない悩みなどを打ち明けられたのではないですか? だから親しくなれたのではないですか? あなたには色々と打ち明けたのですね。それは心を許しているから信頼しているからでしょう」
「は、はい、確かに彼女は私を信頼し色々打ち明けてくれました」
「それはどんなことですか」
興味が少し北条の猜疑心を弱めた。少なくとも今の田中は嘘は言っていないと言う確信が持てた。
「今経済的な事を含め仕事以外の事でも疲れてる事で」
「江坂さんに子供がいると言う話ですか?」
「あの子供の事です」
「実は江坂は三崎君の恋人を寝取り逃げたそうなのです。最初はけしからんと思っていましたが、今は彼女は毎日自分を責め償いとして1人で子供を育てているのです」
「そんなことが・・では彼女は激しく罪の意識にさいなまれているのですね」
「私も最初は悪女だと思いました。しかし彼女なりに責任を感じており見ていて辛そうでした。三崎君に謝らなければいけないと言っていました」
「そうだったんですか。あなたは彼女を理解しそして同情した」
「そこですがやはり三崎さんが1番そして小西さんも何か知っているのではと非常に関連が重要になってくるのです」
「わかりました」
「実は江坂からきいた限りでは小西とは3人同期の関係だった。その後、小西と三崎は恋人関係になった。2人は同じ職場で周りにわからないようにコミュニケーションを取っていった。しかし小西は三崎の見えないところで江坂に何度も話しかけて仲良くなりそれを三崎が見ていた」
さすがにこの答えは北条にとって意外だった。子供と言う単語が田中の口から出るとは思わなかった。なぜか小西の事が悪い人間に見えた。
「ええ彼女は男の子を1人で育てるシングルマザーですし、なんでも前の職場で恋敵だった人から奪って認したらしいのです」
田中の言い方に焦りはなくなり江坂に対する思いやりも感じられた。北条は共感した。
「だから養育費をわたしたんですね」
江坂の境遇を理解しようとする姿勢が見えた。
田中は話を聞いたころを思い出した。
「写真を見せてもらった時驚きました。私の弟の幼い事にそっくりでした。それで他人事とおもえなくなり苦労している彼女に」
しかし北条はさっきから気にしている部屋の装置を指摘した。
「ここのランプみたいなのはなんですか?」
「ああ、それは緊急連絡スイッチです。各部屋から緊急連絡があった場合私の所へ直通でつながる様になっているんです」
「えっ? では江坂さんの部屋にもそれはあるんですか?」
「はい、あります」
「では、江坂さんが殺された時間もこの信号はあったんですか?」
「いえ、ありませんでした」
「何故だと思いますか」
田中は別に犯人がいると思われているのか自分が疑われているのか微妙なかおをした。
「わかりませんが、たとえば犯人に押さえつけられたとか襲われたりして逃げられなかったと言う事ですか。」
「そうなる事は予想されてたんですか」
自分の想定不足を指摘されたような嫌な顔を田中はした。
「防犯スイッチはわかりにくい場所にあります。初めて入ってきた犯人には分かりにくいです」
友里花は言った。
「と言う事は犯人は最初から防犯ブザーを押させないようにしようとした。と言う事は部屋の作りを良く知っている人と言う事になる」




