ミラノ工業の秘密
「ようこそおいで下さいました」
北条は事情を話した。
「なるほど、松本さまがいなくなられたと」
「はい、手がかり、特に交友関係の手がかりがなく困っています。またさらに松本さんの事を知るためにぜひお話を伺いたいのです」
「松本さんが経歴詐称をしている? ははあ……」
「この会社に確かに2年前いらしたと言う事を知りたいのです。松本さんと同僚や上司だった方はいらっしゃいますか」
「なぜ松本さんが詐称したのか聞かないんですか?」
「それを聞くと、何かまずい事があったと我々が勘ぐっていると思われるからです」
工場に案内された。そして数人が呼び出された。
「松本さん?ああ、2年前にやめた」
「皆さんにお聞きしたいのです当時の様子を」
「そうだな、あまり休憩時間も話さない方だったね彼は。もくもくといつも仕事してたし、無駄な事はあまり話さなかったし、わからないな」
「彼失踪したの? なら今の周囲の人に聞けばいいんじゃない?」
「ええ、実は会社内では松本がいなくなった事はあまり大事にならないよう内密にしているんです」
「なるほど」
と言いながら皆は顔を見合わせた。
酒井と言う男が名乗り出た。
「いつも話してた人がいたなあ、何かよく2人で話してたね」
「その方は?」
「やめちゃったよ? 彼と同時期に」
「えっ!」
「で時々もう1人いる奴としゃべってた」
「その方は?」
「あれいない。トイレかな? あっ来た」
宅間と言う27歳くらいの男だった。
「何ですか?」
「聞きたいことが探偵さんたちがあるって」
「えっ?」
男は明らかに嫌な顔をした。あまりにあからさまだった。
「宅間さんですね。あなたは松本さんと別の方と3人で話されていたんですか」
「い、いえ、なんてことない世間話ですよ」
「貴方とよく話がしたい」
北条は圧力をかけた。しかし宅間は逃げた。
「今忙しいんだ」
「松本さんとよく話していたと言う方のお名前は?」
「須崎さんて人」
「須崎? 今の松本さんの同僚と同じ名前だ。縁があるのかな」
「いえ、同一人物かもしれません」
「ええ?」
「三上さん、社員名簿を」
三上は従業員に社員名簿を見せた。
「ああ、この須崎さんだよ! 今あんたの会社にいるのかい!」
「ええ!」
「じゃあ松本さんと須崎さんはミラン工業の同僚でその後何らかの理由で同時にやめて今の三上さんの会社に入ったと言う事ですか」
「実は須崎さんは辞めたんです。つい先日」
三上は事情を話した。
「で、取引先の社長宅に泥棒、不法侵入者が入ったのが須崎さんがやめて3か後」
「これはかなり縁が深そうです」
「松本さんと須崎さんは2人とも経歴を詐称しミラン工業の事を伏せて今の会社にほぼ同時に入社した。しかも2人は今も昔も仲がいい」
「これ決定的じゃないですか?」
「一体ミラン工業時になにがあったのか。そして2人はなぜ今の会社に入ったのか」
「やはり2人は社長宅襲撃に関わっているのか?」
それを陰から見ていた男がいた。
「誰だ!」
それは宅間だった。




