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プロローグ1

ーーリア充爆発。リア充爆発。

彼は底のしれない焦りからか正気を失っている。と、言っても仕方がない。人生最大の修羅場が目前に迫っているのだから。自分の身に起ころうとしている危機に気づかないまま。

今年度も後半に差し掛かる11月初め。冷たい北風がひゅーひゅーと音を立て、空は薄暗くなろうとしている。道行く人々を眺めていると、マフラーに顔を隠す人やコートに身を覆う人、赤い手袋での上から熱い息を吹きかける人まで様々だが、皆この寒さを乗り切ろうとしている。

中学3年になった彼、西岡尚紀は今まで幾人もの女性を泣かせてきたくせに未だ恋人一人いない。周りを見ていると、十五歳になってクリぼっちのやつは半数もいないのにだ。

「好きになって、もう五年。未だに言えないなんていくら何でもださすぎるよな」

緊張をごまかしているつもりなのだろうが、全くその意味を成してはいない。自分という登場人物を出すことによって、襲い来る不安という名の奔流に一人ではないように錯覚しているに過ぎないのだ。

友達に頼むだけでも落ち着きを保てないようでは。


さかのぼること1時間前、尚紀は古くからの友人の、やっさんこと岩本靖騎に「あいつ」を呼び出してもらうよう頼んでおいた。ラブコメにありがちなあれだ。

「やっさん、今日の放課後なつきに西体育館裏まで来てくれって、伝えてほしいんだけど頼めないかな?」

「なにぃ!?お前も遂にリア充への道に入るというのか。わかった、かつてのリア充撲滅同盟団長の俺も親友のためなら迷うことはない。任せろ。んで、どうしたらいいんだ?」

歯をむき出しにして獰猛に笑うその横顔はまるで小さな弟にお兄ちゃんが「全部俺がなんとかしてやる」と言っているような、力強いものだったが、その顔で言うには中身が間抜け過ぎる。

「とりあえず、Eクラスにあいつはいると思うから、終礼済んだらさっき言った通りに頼む。伝え終わったら、俺に一通連絡してくれ」

「おう、手伝ってやったのに怖気づいて逃げ出すんじゃねぇぞ」

「当たり前だ。相棒」

どこかで聞いたようなフレーズで別れを告げる。教室に戻ろうとする、その筋肉質な背中はいやに頼もしく感じた。彼はかつてリア充撲滅同盟という超絶中二病臭い集まりの自称団長だったのだが、クラス一の美女から告白されて以来、リア充の増殖に非常に好意的なのだ。自分としては設立した本人が一番に同盟から抜けるのはいかかがなものかと思うが、こうして告白の後押しをしてくれるのはありがたい。いちいち癇に障るような物言いがたまに瑕だが。

尚紀は深呼吸をしてから、

「あとは言うだけ。それでおしまい。それでおしまい...」

少年は廊下で一人襲い来る不安と葛藤を繰り広げていた。


そんなこんなで尚紀は30分以上この寒空の下でそのときがくるのを待っている。

手は激しく脈打つ心臓と連動しているのか、震えが止まらない。

「にしても、あいついくら何でも呼び出すのに時間かかり過ぎだろ」

誰もいない校舎裏でここにはいない協力者の悪態をつく。が、その程度では体の震えは止まらない。

少年は迫りくる「その時」に押しつぶされそうになっている。時間が流れるにつれて、彼は寿命が縮んでいき、今にも失神してしまいそうな様子だ。

だが、待つこと40分。ようやく彼のもとに安堵の知らせが届いた。しかし、それは逆に彼の心臓に悪影響を及ぼすこととなる。

『クラブが長引いたみたいで呼ぶのに手間取っちまった。さっきそっちに向かわせたから、あとはがんばるんだぞ。うまくいったら、教えろよな』

ああ、ついにきてしまったと言わんばかりに、深い溜息をつく。すぐそばまで来ている現実にもうこのまま逃げ出したくまで感じた。だが、そんな彼の脳裏にふと疑問がよぎった。

「あれ、『あいつ』ってクラブ入ってたっけ?」

ーー確か「あいつ」もともとは水泳部だったはずなんだけど。まあ、でもクラブなんて幽霊ばっかなんだし、「あいつ」も今日たまたま行っただけだろ。

このとき、この食い違いを気づいたにも関わらず、見過ごしてしまったのだ。これから彼を襲う衝撃なんて微塵も感じていない、そんな顔で。

「とりあえず、『了解、サンキュ』と」

ーーここまで来たら覚悟決めねぇとな。やっさんも協力してくれたんだし。

彼はようやく体の震えを静まらせた。心の中はまだまだ落ち着きを取り戻していないことは本人を含め、気づく者はいなかった。

ふと顔を真上に向けて、空模様が怪しくなってきたなと、考えた直後、俺はなにがどうなっているのか理解が現実に追い付いていけなかった。

「尚紀くん、どうかしたの?岩本くんから呼ばれたんだけど」

ーー「あいつ」じゃないじゃん!俺は確か、やっさんに...って、ああああああ!

あいつ、「なつき」って名前間違えてんじゃねぇか!?確かにこいつも「なつき」だけど。

と、とりあえず俺はどうすれば...

「あ、あの!突然呼び出してごめん。人違いだったみたいなんですけど、お、俺と付き合ってください!!」

ーーん?おれは何言ってんじゃあああああ!?

あまりの動揺になかなか次の言葉に入れない。

「あ、いや、これは...」

だが、この女は俺の弁解を遮り、まさかの一言を返す。

「あの、私なんかでよければ、よろしくお願いします」

ーー何、この少女漫画風のベタ展開!?

「え...」

少年は前言撤回などできないまま、ただひたすら時間の流れに飲まれていた。

15歳冬、西岡尚紀のリア充?生活が幕を開けた。

どうもはじめまして。NPC PROです。この作品を書こうと思った理由や投稿頻度などは次回以降お話いたしましょう。やっぱりはじめは自己紹介ですかね(笑)まず、この名前をつけた理由なんですが、実はぼく、大のFPSファンでして、ゲームっぽい名前にしようと思ったのが第一でした。はじめはPLAYER PROにするつもりだったんですが、別に僕自身ゲームがうまいわけでもないので、その名はあきらめました。そして、コンピューターならいいかと思ってこの名前で落ち着きました。次に、リアルのぼくなんですが、バリバリ現役の学生です。はっきり言ってガキです(笑)京都府在住のいたってどこにでもいそうな男の子です♡こんなぼくですが、どうぞよろしくお願いします。次回も「ことくり」を見て頂けると幸いです。

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