95話 寿命について考えたりします。
エントの幼体……幼体?丸太状なので年輪を見ればわかる、と思ったが、そんなものはアテにならないということに気付いた。季節とかどうなってるんだこの世界。でもまあ一応確認してみよう。
年輪が20本……えぇ、つまり元の世界でだいたい1850年ぶんくらい? 年輪が1年に1本刻まれるなら、だけど。
「エントの寿命は200年とも300年ともいわれているけれど、動く植物だからなかなか観測できないのよね」
「ちなみにドラゴン達は?」
「あれは寿命が存在しない説まであるわ。新しい子供が生れるのは今いる個体が減ったら、という仕組みで成立しているみたいだし。子供の大きさとか、私たちが見たあの大きさとかいろいろあるけど、卵が産まれたり、あるいは出産したり……そういう話はどこの資料にもないみたい。観測してても人間の寿命とは明らかに違うし、確認できないっていうのが正しいのかも」
植物系の存在なら年輪なりで調べられるけどそれも難しいね、とメモリ。
そもそもそれを確認することもできないか。
「おーい、しゃべってないで手伝ってくれよ!」
「ああ、すまんエリナ、今行く」
おお、結構いる……と思ったが、エントだけでなくトレント、歩芽など、木に分類される移動植物が複数いる。鑑定で識別して誘導。トレントの方は幼木エントの倍ぐらいの体調で、太さは直径が半分くらいか。移動はトレントの方が早い。適当に誘導して、エリナに運んでもらおう。
トレントを軽く小突く……うわっ、近場にいる殆どがこっちに注目した。こいつらに顔みたいな部位はないのに、なんで注目された、と認識できたのだろう。敵意に敏感になっているのか? きっと何かのスキルで成長しているんだな、と思っておくことにしよう。
「エリナぁ、輸送任せた! 適当に撒いたら戻る!」
「わかった、早く戻ってこいよー!」
適当に他の木……動かない木が多い場所に誘導して、そのまま引っかかるように仕向ける。枝同士が絡まってうまくいったようだ。抜け出すには時間がかかるだろう。
あいつらに痛覚ってあるのかな?そのあたりは確かめる手段があるはずもないか。
エリナのもとに戻り、エント輸送の手伝いに戻る。生きているエントは軽いといったが、あの大木エントもそうなのだろうか……あのサイズのものが平然と歩いているのだから、多分軽いと思うけども……まあ、それでもいろいろ不安なので手出しはしない方針で。
幼木エントを30ほど運んだ時に、それは来た。
トレントの大木。
戦う意味は今のところないので、回避しつつ逃げ出してしまおう。