89話 街の外に行って、少し暴れてきましょう。
盗賊団退治の依頼が出ていた。少し前から掲示してあったのだが、報酬に関する記載は一切なかった。組合曰く、いつから貼られていたか不明のままで、管理側も把握できていない……が、何かの手段で剥がせなくなっている、とのこと。ピンで刺して止めているだけなのに取れないとかで、そのまま放置されているそうだ。
一応名目的には依頼が存在しているし、受けておいてもいいか。盗品とかの管理はどうなっているのだろうか、と聞いたが、相場の4割程度の価格で商業組合が買い取り、7割程度の価格で元の持ち主に売却。絵画や芸術品は買取が2割、返却売却が3割と少し安めに設定されている。いずれも、持ち主が購入しなかった場合は、月に1度開かれるオークションで売却されるそうだ。
商業組合がすべて管理している代わりに、管理などの責任もすべてが商業組合持ちだとか。
準備を終わらせ、車を運転して西側に向かう。小高い丘の上に、小さな数件ほどの小屋を建て、通りかかる旅人や行商人を標的にしているらしい。
車のエンジンを稼働させる。すこしばかり轍の痕跡があり、そこからまだ使われているものだとわかる。木製の掘立小屋か。ふむ……どうせもうへこんでるし、良いか。
警備をやっている二人組を、車で跳ね飛ばす。衝撃は予想よりも小さいものだった。取引などだと考えたのか、そのまま道を塞ぐように立っていた二人は、おそらくもう立ち上がることはないだろう。そのまま、一番近くの小屋に車で突進する。
突然殴りこんできた俺達に、盗賊団の対応は遅れた。大きな音でほかの小屋からも向かってきたが、そっちはエリナに任せる。殴る音や悲鳴、それからエリナの罵声とシルバーの威嚇が聞こえてくる。
ドラゴンの鱗でできた俺の剣。峰側に鈍器になるような重りがついている剣は、『粉砕者』という形状で、この世界では割とあるようだ。なぜそんな呼び名がついているのかというと、石製だったり金属製だったりするゴーレムやトカゲ、刃物無効なんかを持ち合わせている相手に対して不利とならないようにするためだ。
そんなもので人を殴ったらどうなるか。庇うように構えた相手の両腕骨が粉砕される音が聞こえた、とだけ言っておこう。
殺すことに関して躊躇いがあったが、そもそも蘇生の技術が存在するのだ。あまり気にしなくても大丈夫か、と思い直した。
不意打ちが功を奏したのか、20人くらいいたであろう盗賊団は、5人と1匹を相手に壊滅してしまったのだった。
俺達で倒せるのならばほかの人達が退治依頼を受けていたのでは? と考えたが、この拠点を作ったのは割と最近らしく、仕掛けてある程度回収したらそのまま移動する予定だったらしい。
縛り上げてから、溜め込まれた物資と彼らを車に積み、そのまま都市に戻ることにした。