86話 納品と配達のお仕事です。
HJ大賞2018に応募します。
冒険者組合の方へ向かう。この街の依頼掲示は、難易度の高い魔物や動物が少ないため、殆どの依頼がライン以下に難易度設定されている。つまり、新入りだろうとほとんどすべての依頼を受けられる、ということらしい。
運搬物資の紛失や破損などがあった場合の弁償金額は難易度に関係なく高かったり安かったり。物品次第ということらしい。
運送物資の欄は……と。この辺りは車で移動すればいくつか纏めていけそうだ。商人たちの小間使い、個人的な郵便受け渡し、ただどこにおいておけという指示だけのもの……なんだか麻薬取引みたいなものもあるが、そっちには手出ししないでおこう。
ちなみに、麻薬に限らないそうだが中毒症状は解毒と除染、それから解呪のどれか、一定以上の実力があれば取り除くことができるらしい。呪い扱いでもあるのか。
そういった雑談をしながら、依頼を適当に見繕う。明らかに怪しいような依頼は除外して、ダンジョン発掘の宝石類の輸送、機械類の輸送、食料と手紙。このあたりでいいか? 人員の輸送……は、少し怖いものがあるな。今回はしないでおこう。
納品、の依頼もあるのか。錬鉄の延べ棒2トン分いや、これ冒険者に任せるような重量ではないのでは……? しかも輸送ではなく納品なので、自力で入手しろ、ということになるのか。ダンジョンで手に入れられそうなら考えておこう、割といい感じの報酬だしな。
ぶつかったりして壊す可能性を考慮しないならば、結構気楽に稼げる……と思ったが、まとめて運ぶには輸送手段が必要なわけで。川の上という環境のせいか馬は少なく、あまりに大きなもの、重いものは水路で運送するのは難しいか。
テレビで見たヴェネツィアの水路、と言ったら通じるだろうか? 市街地側の水路はあまり広くない。水路上ですれ違うことのできる大きさの船で、さっきの依頼で見た錬鉄2トンというのは難しいのかもしれない。
もっとも、船の浮力のことなんて知らないし、魔法とかが存在している世界だから大丈夫なのかもしれないが。
ともあれ、そのあたりのことを考えても仕方ないだろう。現状できる依頼をこなしていくだけだ。上流へ、下流へと何度も往復する。それができる道具があるのは非常にありがたい。
苦労しても楽をしても同じ結果になるなら、楽をしたほうが良いに決まっているのだ。
昼前から日没直前まで、街を何往復しただろうか?
元手をかけることなく、30を超える依頼を達成してしまった。報酬は100万から900万前後まで……合計が、1億900万。
明日も依頼が残っていたら、また受けよう。そう考えるには十分すぎるほどの報酬だった。
依頼が残っていたら、という話ではあるけれど。納品依頼の物資を探すためにダンジョンに行くか、それとも川の安全確保の方に出向いたほうが良いのか。そんな風に考えながら、眠気に沈んでいった。