83話 目安が出来たので気楽なものです。
体調はまだ収まりません。申し訳ございませんが、投稿は疎らになります。
逃げるのではなく旅をするのだ、と考えるようにしてからはずいぶんと気楽に運転できるようになった。ゼンマイエンジンの音に合わせてぶぉんぶぉんと声を出そうかと思ったけどエンジンのおとがそういった感じのものではなかった。冷蔵庫とかの音がイメージに近いかもしれない。
運転はまだ慣れないが、先に街を出た人と行商人に気を付ければ、取り立てて注意するものはないだろう。車より大きそうな生き物が出てきたら回避するほうが良いのだろうが……
少し先に、黒い群れのようなものが見えた。遠目から見たら水たまりのようだったが……魔王の群れか。昨晩の神託で、できれば減らしておいてくれ、みたいなことを言われたからな。
ピンポン玉サイズのものから、飛び出し注意の看板の子供くらいの大きさのものまで……大きいのは反動で車体がダメージを受けそうだ。まあ、気にするほどではないか。
半数をまとめて挽き潰す。……やっぱり運転に慣れてないせいだろうか、もう少し潰せると思ったのだが。
そういえば、なんで魔王なのに小さいのだろうか? 疑問に思って聞いたところ、明らかにステータスが小さいため、世界の方が『体長や重量に関して単位ミスをしている』と判断し、自動で大きさを修正していた……ということらしい。ステータスの方に修正が入らなくて良かった。
とはいえ、もとからこの世界の種族ではない、ということで増殖や再出現、成長と、それに加えてステータスの修正。他の生物よりも過剰にリソースを食うらしい。俺とメモリくらいなら問題なく、機械化した存在は、『スキルのせいで変異している亜種』という判定を当てているとか言われたが、正直分からん。分かるのは、魔王は積極的に潰せと言われたことだ。
……つまりあいつらに生き残りを出すべきではないのか?
ハンドルを切り返し、残った魔王を跳ね飛ばす。さすがに下りてまで生き残りを探す必要はないか。進行恐らくだがおおよそ全部潰せたと思う。方向を元に戻し、再び街道沿いに進んでいく。
小さい頃に蟻や芋虫を虐めていた時と似たような感覚を覚えた。違うのは、頼まれていることなのか、無知ゆえの残虐さなのか、だ。
暫く道なりに進んでいくと、川の上にできている都市があった。第227都市。
ようやく、次の街に到着することができた。
南側の城門に近づき、審査の順番を待つ。今日中に都市に入れるだろうか?