77話 騒ぎが大きくなっていますが、手出しが難しいです。
朝に確認に来るはずの兵士も来なかった。この家が認知されていない訳ではなく、食料を買いに行くときに、近隣住民からもそれを聞く事が出来た。
当然ながら、食料の価格は高騰している。少し前に考えていた事が、解決前に問題になってしまったか。
1日あたりの生活費が、5人と1匹で2800万だったものが、およそ6000万に。
賭けで稼いだ分と合わせて40億あったが、それでも66日。切り詰めれば何とかなるかとも思ったが、そもそも価格高騰がこれで終わるとも限らないのだ。
それに加えていえば、建物の中が安全というのは現状の話であり、これから先もそうであるとは限らないのだ。
情報収取すら危険な状況で、どういう行動をとるのが最善かもわからない現状。時間経過で状況が悪くなっていくのは目に見えている。
咄嗟の判断もできないので、方針を考えながら養蜂キットを庭で使う。巣箱と別売りの巣板、それから休眠状態の嬢王鉢と働き蜂を入れる。庭の隅に置いて、近くに花を置いておけば良し。手入れは必要ないらしい。
蜂が騒がしくて思考に集中できなかった。針は無いらしく、刺される心配はいらないとか……。
考え事に集中はできなかったが、リフレッシュはできた。即ち、今後の方針。
「全員で纏まって調査しよう」
2手や3手に別れて調査することも考えたが、このパーティはそれぞれが一点特化型だ。現状では会話による情報収集が難しくなっているので、シーナ以外が情報獲得するのは難しいと思う。
他のメンバーができることを、第2技能程度の能力でできるようにしておいたほうがいいか……簡単な偵察と戦闘技能は、スキルとして購入できる……と思うのだが。現状ではそういった店が開いていない。売り渋りや店員失踪など、原因はさまざまであるが。
ということで、俺達は肉スライム、もといエルフのいた店に向かう。
失踪事件の手掛かりが何も見つからないので、明らかな異常の方を先に探索しよう、という考えだ。一応前以て店の依頼を確認してみたが、そういったものはなかった。どこでも人員失踪でてんやわんやらしい。
街中に人がいないわけではないが……かなり少なく、大半が3人1組で行動している兵士達だ。夜間対応に当たった兵士の3割が失踪したらしく、どうしようもなくなっているということ。
俺達に何かできるとは思えないが、何もしないで失踪被害に遭うのを待ってはいられない、という思いを告げてから店に向かった。