73話 露店を見て回って、いろいろ興味を惹かれました。
遅くなりました。すいません。
少し通りを進むと、出店というか露店というか、そういった店舗が結構ある。屋台のように食べ物を売っていたりとか、野菜や果物の出張販売だったりとか。
ひったくりがどうの、とかの騒ぎも聞こえるので、少し気を付けたほうがいいか。組合所属カードは身分証とクレジットカードを兼ねているので紛失したら色々と失う。まあ幸運が高いから大丈夫か。
物音がしたのでなんとなく目を向けると、建物の間の細い道に、いかにもイメージしやすいような占い師の店があった。机といくつかの道具、それに幌のような日避け。目深に被った布のせいで顔が見えない老婆。
「メモリ、あれどう思う?」
指を指して問う。
「ん、あれは……なんでしょう?暗証番号を求めるような……うーん?たぶんですけど、見た人が神秘的な格好をしている、という認識をするようなスキルを発動しているんじゃないでしょうか。ステータスも隠れてますし、私からは年齢も性別もわかりませんね」
「そうか、じゃあ聞いてみないとわからないわけか……なんだその目は、行かないぞ」
「兄さん昔から変な詐欺サイトとかに良く引っかかってたでしょう? だったら慣れてるかなって」
「慣れてないし慣れるつもりもないし一回ぐらい被害が増えても大丈夫だろみたいなノリはやめろ。いかないからな? というかお前が行けばいいじゃないか」
「それもそうですね。すいませーん」
思っていたよりも素直に聞いてくれた。少し拍子抜けだが、面倒なことは任せてしまおう。
道具を使った様子もなく、数分で占いは終わったようだ。不思議なことに、二人が何を話しているのかはこちらからは聞こえず、頷いているメモリの様子がうかがえるだけだった。
「で、どんな結果を占われたんだ?」
「あー、聞こえてなかったんですか? ふむ……えーっと、判断が難しい出来事に遭遇したら、幸運が高い人に任せましょう、っていうのと、何かしら大きな問題に遭遇するっていうこと……あとは、取り合わずに共有しましょう、だったかな?その三つですね」
一つ目はつまり面倒ごとを俺に押し付けるっていうことか……というか、それは占わなくても誰でもが出す結論なんじゃないだろうか?
あとの二つ、共有……まあ、なにか物資が入った時に考えればいいか。大きな問題は、また蒸気機関の時のような問題に遭遇しなければいいのだが。
「そういえば、代金払ったか?」
「あ、まだでし……あれ?」
占い師はいなくなっていた。たぶん何かのスキルを使っていなくなったのかもしれないけれど……とりあえず、スられたりとかはなかった。少しだけ警戒しておくか。