72話 予定が空いたので、お買い物です。
眠気に負け続けています。
変な夢を見た気がした。提出用の論文を書いたり破って捨てたり。俺は大学中退したので論文を書いた記憶はないが、ドラマや漫画の知識はある。
内容が魔法研究に関することだった……ような気がするが、たぶんこっちに来てからの影響を大きく受けているから、だと思う。
とはいえ夢の内容なんて覚えていない。雑な感じに切った布みたいに端から忘れていく。
蒸気機関やゼンマイエンジンの発表が近いのもあり、依頼の掲示は少しばかり速度が落ちているらしい。
まああんまり事件があるような状態も困りものか、と考え、メモリと一緒に買い物へ向かう。
なんでメモリも一緒に来てるんだ?あとシルバーも。
なにかを買う予定なんてなかったのだが……
「兄さんについて行ったら、何か面白い事がありそうですし?」
「やめてくれ、俺は運が良いんだ」
そんなことをボヤきながら雑貨屋へ。貧乏学生が捨て値で売ったような使用済み教科書が数冊あったり、研究論文の写し……
それから、誰でも簡単養蜂キット……?
少し興味を惹かれた。こっちに来てから甘いものをあまり食べていないような気がするしな。時間がかかって量が少なくてもやってみる価値はあるんじゃないだろうか。
〈自宅の庭程度の狭い空間でも出来ます。近くにある花や土の質によって採取可能なモノがかわります〉
なるほどなるほど……土も影響するとはどういうことだろう。庭の隅に巣箱セットと花壇をつくってやればいいか。
少し高めの2億クラピ。店のおじさん曰く、出来るものには期待するなよ、とのこと。
いいんだよ、やってみる事に価値がある。
刺された時に痛くないかが心配だが。
セットと取り扱い説明書、それから養蜂帽子を購入し、他にもめぼしいモノがないかいろいろな店を回る。
ふむ……分身のスキルもあるのか。複数相手にする時には便利そうだ。レベルが高くなろうともプログラム的な行動しかできないらしいが、パーティでの防陣を作るのには十分か?
そういえば、スキルレベルを上げるためには経験を積まなくても、店売りされているものを使ってスキル経験値にすればいいのか。
同じことを考える人は結構いるせいか、店売りでレベルが高いスキルはあまり多くないようだ。
こういうのを見ていると大罪の名称のスキルがあったり……なんて思ったが、まあそんなものはなさそうだ。
あの神様なら丸パクリは嫌だ、なんて言いそうだし。
もうしばらく色々探してみるか。