7話 レベルとランクを稼ぎたいので、お掃除の時間です。
そういえば仲間を探すという話があったが、その辺りはどうなったんだろうか。
「冒険者ランクがラインになったら組んでくれる人が1人、280になったら組んでくれるのが1人。という事で、当面は依頼を私たちでどうにかするの」
「なるほど、じゃあ新しい依頼を探さないと、か」
「とりあえず今回は私が探しておいたわ。定期的に上がってる依頼らしいからそんなにキツくないと思う。[魔塵清掃]ですって」
魔塵とは、魔法を使った時にその場に残る、燃え滓のような物質だという。ふつうの魔法を行使した時にはごく少量で、風に吹かれたらもう追いかけられないような量しか残らないらしい。
しかし、大きな魔法を行使し、しかもそれが失敗した時。そこは魔塵が延々と湧き出る場所になるらしい。
記録によると、20年以上前から魔塵が沸いている場所。都市内部の南西側、元々は金持ちが住んでいたが、その魔塵のせいで地価が大暴落したとかなんとか。
「湧き出る魔塵って有害なのか?」
「一気に大量に吸うとね。幻覚作用もあるし、屋敷の中は一部異空間に繋がってるなんて噂もある。まあ、魔塵の多すぎる場所には近づかない方がいいんじゃない?」
それで掃除ができるかは疑問だが。
俺たちの他にも数人の冒険者が受けているらしく、何人か纏めて屋敷に連れられた。
屋外から見ても禍々しい雰囲気が……なんて事もなく、少し古くなっているが気にならない程度。魔塵のせいで外観が変容しないのか、それとも幻覚作用が起きているのか。単に管理組合が維持しているのかもしれないが、知る術はない。
屋敷の中。青黒い埃のような何かが、大量にある。アオカビチーズのような色合いのたんぽぽの綿毛、と言ったら通じるだろうか。
あれが魔塵だと説明を受け、直接は触らないように、と忠告を受けた。
「さ、手分けして掃除しちゃいましょ」
前以て借りていた箒とチリトリ、それから軍手のような手袋。それだけの簡単な装備で、魔塵をずだ袋に入れていく。
隣の部屋でほかの冒険者たちの足音が聞こえるが、それが不安を煽り立てる。
「サマンサ、そっちは…あれ」
人影があったような気がしたが、んん……?
「サマンサー?」
「私はこっちよ、どうしたの?」
「あー、こっちのほうは終わったんだが、そっちがどれだけ進んだのか聞いておきたくて」
「ああ、大体終わったわ?このくらいなら回収できなくても許容範囲だと思う」
袋も5一杯になったしね、とサマンサは告げる。袋の大きさの割に軽く、運搬はそれほど難しくはなかった。
どうしてここが魔塵に溢れたかは聞いていない。金持ちが何かやらかしたくらいに予想を立てておこう。
合計で数時間かけ、俺たちと他のパーティは掃除を終えた。魔塵は管理組合で処分、もしくは利用するそうだ。
組合員から報酬を受け取り、宿の方へ戻る。
宿に帰ったとき、サマンサが「どこに行ってたの」と確認してきた。あれ、俺の隣に……あれ?
周囲の発言から、俺と行動を共にしてなかったらしい。もし宿の全員がどっきりを仕掛けているのでなければ、だが。
俺はいつから、魔塵の影響を受けていた?
ちょっとだけホラー。
ネタばらしはありません。