64話 ラミアの里に宿泊して、夜中に神託を受けます
「スミスアンドウェッソンの第2モデルね」
眠りに入ったと思ったのだが、前触れもなく沸いた神様がそう告げた。
「こっちの事、割と見ているんだな」
銃の事はまだ話していないのに切り出されたので、干渉してくれてもいいのに、という思いを込めて呟く。
「そうもいかないんだよ、おにーさん。ままならないといってもいい。犯人は分かったけれど、まずどこにいるのかわからない。君の元居た世界でも、インターネットという広い情報世界があるのに、インターネットそのものがどこにあるか、なんて分からなかっただろう?たぶんどこかのサーバーだとか、あるいは衛星や回線が仲介してるという知識はあっても、そうは思えないだろう?無線通信の中に実体があるような、そんな勘違いをしたりしないか?少なくとも私はしてたね。で、だ。君のパソコンは、そういう勘違いを体現したような状態で活動している。簡単に言うと実体が見つけられない」
「その長い例え話は必要だったんですかね?」
「比喩表現をするためには必要だと思うけどね」
初めてあった時とは違う口調であるのは、何かしら理由があるのだろうか。
「気分の切り替えっていう感じが正しいかしら。で、実体がなくて、世界中に漂っているような状態なんだけれども……君には少し危険なことをしてもらう。蘇生があるから死んでも大丈夫とはいえ、機械になったら生命活動がどうとかいう状態じゃないからね」
「つまり俺に、機械になるかもしれない危険を負えってことですね」
「そういうこと。まあ最も。君が何もしなければそっちの世界の生き物が全部機械に……蒸気機械になるかもしれない。そういうことを考えたら、君は請け負ってくれるだろう?」
「なんで蒸気時代なんでしょうね?」
なんとなく敬語のような話し方になってしまったが、敬意はほぼない。
「さあね?君が閲覧していたホームページに関係あったりとか」
「いえ全く。バーチャルアイドルが歌ったり踊ったりする動画を見ていましたよ」
「じゃあ、誰かの意志を汲んだとか……まあ、それだったら誰だ、という話になるのだけども。少し危険なことをしてもらう、とは言ったけど、君ならば危険はほとんど無いともいえる。君はインターネットの使い方を知っているだろう?」
ファンタジー世界に来てまで、インターネットやら蒸気機械やら、科学文明の単語ばかり聞くようになるとは全く予想していなかった。
「解決したらファンタジーライフを送ってくれよ。なんなら魔王だって呼び出してやるさ」
「そういうのは要らないです」