61話 ラミアの里に再びきましたが、進退決まりません
サマンサとシルバーが先に進むことを拒絶した。
単純に嫌だというのではなく、かつてナメクジとどんな思い出があり、それによってどんな精神被害を受けたか、どんなトラウマが出来たか、こっちの想像がつきやすいような具体的な説明をそれはもう詳しく説明してくれた。
ということで、しばらく家畜ヒドラを相手どって訓練でもしよう、ということになった。
いつかまた不死スキル持ちを相手にするかもしれないし、対処法はいくつあっても足りないだろう、と判断したからだ。
ラミアたちに、ヒドラを一匹購入したい旨を告げると、300万クラピでいいと言われた。
ここでの宿泊費よりも安い。元をとれているのか?と思ったがそもそもラミアたちがダンジョン発生の魔物なので元手とか関係なかった。
しかし、彼らが資金を手に入れる理由は何だろう?
まあ、考えても分からないものは後回しにして訓練。
回復動作中に回復魔法をかけてやると、物凄い速度でヒドラの肉が増殖していき、名前が「ただの肉塊」になった。スキルは超回復以外消えてしまったので、実質不死スキルを潰した……不死殺しを成功させたのではないだろうか。
と思ったが、ただの肉は傷を一瞬で回復したりしないしエネルギー供給もなしに増えたりしない。
もしかして、もともとそういう生物、魔物、もしくは類似する何かがいる?
別の魔物に変異したときは、前の魔物を倒したことにはならず、そっちの方の経験値は手に入らなかった。まあ仕方ないか。
無限に膨らみ続ける肉に刃物を突き立て切断……しようとしたが、結構な勢いで回復する。
スキルレベルが高いわけでもないのにシーナが盗むことができなかった。曰く、相性みたいなものがあるとか。回復系は基本的に失敗するらしい。
結果どうしたかというと、エリナがやった。回復が発動しない微妙な威力の拳を繰り返しあてたのだ。体力4億超えの存在に対して、回復しない1発当たりのダメージ上限は4500、小指をぶつけた程にも届かない。
エリナはおよそ7万発殴り続け、1億ちょっと残った体力を、一撃の拳で消し飛ばした。
毎秒4発の精密な連撃を、5時間以上。
ヒドラのもともとの体力よりはだいぶ少なくなっていたが、それでも十分に……ん?俺の方が体力は多くなってるのか。
止めるつもりはなかったが、途中から止めに入れる状況でもなくなっていた。
上の階層からの死亡者が運ばれてきたため、その準備の救援をしていたからだ。