42話 同行者が増えましたが、何か困ることはないようです
土日は深夜投稿のみになります。
狼が付いてきている。多少きになるが今のところ大きな問題はない。
そう思いながらだいぶ進んだが、このあたりもまだ彼らのテリトリーなのだろうか?まあ、半径60キロくらいなら狭いのか。このあたりは元の世界の知識がないので分からないが、縄張り範囲内であると想定しておこう。
そんなことを考えながら進んでいて、夜。
いや、君なんで一緒に焚き火のそばにいるの?
お構いなく、みたいな態度をとるんじゃない。お前の分の食事は……食用粘土しかないぞ。というか俺の分もそれしかない。
……そんなにこれが欲しいのか?じゃあ夜番の見張りと交換だ。
さすがに通じないか。
「なにやってるの?」
「ああ、サマンサ。こいつと交渉できるかと思ってな?食事を渡す代わりに不寝番を、と」
「ああ、それならやり方があるわ。シーナが値切りスキルあるし、そっちに任せたほうが良いとは思うけども」
「なるほど……やってくれるか?」
「大丈夫、少し待って」
シーナは狼の前に、携帯食料という名の食用粘土を置き、その上に右手の人差し指と中指を乗せる。
お互いに一言も一声もあげないまま、十数秒が過ぎ……
シーナが手を離した。
「大丈夫。食料供給がある限り付いてくるみたい。一日分は私たちと同じ量で大丈夫だって」
仲間が1匹増えることになった。
鑑定によるステータス確認。
ソロウルフ、レベルが350、速さ高い、魔抵抗低め、と出たが具体的な数値は表示されなかった。スキルは……
[物理無効貫通/Lv62]
[火炎魔法/Lv82]
[牙攻撃/Lv94]
[第六感/Lv153]
ふむ。動物ともスキル交換はできるのだろうか?
試しに爪攻撃をスキルクリスタルにして犬に渡す。
お、うまくいったみたいだ。
とりあえず動物とのスキル交換は……いやよく考えたら戻ってこないじゃないか。おいバカ犬、鼻で笑うな。その笑い方はお前たちの特徴なのか。
まあ、もともと使ったことはなかったから困る事は無かったんだが。
戦闘術ナイフのスキルを渡すとどうなるんだろう?こっちは取得スキルに余裕が出たら……街に戻ったら店で買うか。
というか動物って進化するのか?
「進化というよりは成長で名前が変わるのよ」
成長度合いでスキル構成が大きく変わる事は、たまにしかないらしい。
細かい差異はあるってことか。
犬、もとい狼がパーティに加わったのが冒険者稼業にどんな影響をするのか。
なんだかんだで結構楽しんでるなぁ……
これで機械化した動物や魔物のことなんてなければ、普通のファンタジー世界だぜいぇーいって楽しめていたのに、SFやスチームパンクが食い込んでくるような世界になってしまったとは。
まあいいか。俺の責任は安請け合いした事だ。だから、軽く問題を解決してやる、くらいの気概でいたい。