29話 倒した訳ではないのですが。
さすがに即日で呼び出されるわけにはいかず、礼服などを用意したいといったが、管理貴族の応接間で簡単な話し合いと表彰授与を行うため、そんなものはいらない、と言われた。即日の方も断り切れず、夕方に出向くことに。
「どういうことなの?」
「俺にも何が何だか。テロリストの手下を倒したことになってるらしい」
実際テロのようなものだったが、詰所以外は被害はなかった……が、軍管轄の詰所が被害に遭ったということが重要で、そのまま被害を留めた俺たちが表彰されないのは問題あり、ということらしい。
乗合馬車に乗って城下町に向かい、そこから徒歩で指定された建物に。
連絡が行き届いていなければこのまま帰れたのだが、と思ったが伝達魔法があるらしい。お役所優秀だな。
そのまま招待され、扉を数回くぐり廊下を進み、応接間のような一室に。俺たちの宿の部屋の5倍は広い。
俺たちを案内した給仕のような女性はそのまま廊下で待機するようだ。
「座ったままで構わない。本当ならば長い演説と儀式のようなものが必要なんだが、テロということでそのあたりは省略する。見たこと、あったことを教えてくれ」
あったことを、少しずつ話していく。行商人が冒険者を脅迫し、盗みを働かせていた可能性があったこと。
その行商人を確保し、盗みをやらされていた人たちを捕まえた際に、行商人に用事があると伝えたら同席させてもらえたこと。
彼に、冒険者依頼への違約金が出る、と伝えたところ、右腕が爆発してゴーレムになったこと。
数回伝えたはずだが、魔力切れのようなもので動けなくなっていたので、倒したのは自分ではない、自滅だということ。
機械化加工というスキルが存在していたということ。
鉄のゴーレムは、数日前にダンジョンに沸いた敵と似通っている、ということ。
機械そのものの概念はまだない……と思うのでゴーレムだと言っておく。
これで鉄のゴーレム、彼の遺体の構造が把握されれば、機械というものの概念そのものは発生するはずだが……
ある程度のことなら願い事を叶えるということらしいので、盗みを働かされていた3人に対しては恩赦を与えてほしい、ということ。それから、いくらか報奨金がほしいということを伝えた。
3人は脅迫されていたからだし、後者について例の行商人がいなくなってしまったので、行商組合からの受取がだいぶ先になってしまうことが理由だ。
その件については割とあっさりと了承された。3人に対しては10日の労働だけとなり、俺たちに対しては合計で25億クラピが支払われることに。
そして、夕食会に招待されることになってしまった。