27話 詰所の警備兵も交えて、商人とお話です
警備兵曰く、あまり乱暴なことになるようなら止めに入るといわれた。こちらからはしない、と言ったが、そちらがそのつもりでも、相手がどういうことをするかはわからない、とのこと。
まあ妥当ではあるか。サマンサも含めパーティ全員で詰め所の方に来ていた。
件の商人は、少し肥満ぎみ……あくまで肥満ぎみの範囲。ひげを伸ばし髪の毛は禿げかかっている。年齢は……ちがう、日数は15000日前後か。あくまで見た目だけだから実際はズレているのかも知れないが。
「何の用だ」
尊大な態度。手首を机に軽く拘束されているとはいえ、確かにスキルがあったらどうなるか分からないな。
「いえいえ。この人の取り調べ、おそらくですが今日明日では終わりませんよね」
警備兵に問いかけると予想通り肯定が帰ってきた。
「馬鹿な。他の都市との流通が滞るのだぞ。ほかの都市や行商組合が黙っていないのではないか?」
「ありません。あなたは確かに大きな商人かも知れません。ですが、一個人が運搬できる程度の物資流通が止まったところで、他の流通経路が止まるわけではありません」
実際にこの人がどの程度の割合の流通を担っているのかは分からないが、個人で輸送可能な物資でこの街の外からの流通すべてが止まるなら、それはそれで問題大ありだろう。
消費の方も結構インフレしてたからな。カロリーも物欲も、だ。
なので、こいつがいなくなったところで問題はないと思う。それに、行商組合と言っていた。本来なら後ろ盾になるような場所なのだろうが、犯罪教唆や脅迫じみたことをする登録者を助けようとはしないだろう。
そこに漬け込む。
「商人なら契約の重要性はわかっていますよね?あなたは今夜中……本来の昼過ぎまでに出発予定場所にいなければ、契約違反になりますよね」
「な、貴様ッ」
「なので違約金を頂きたい。問題ありませんね?」
「明日昼までに出てやるからなッ、そんなことが許されるはずがなかろう!」
「余罪追及をするので、取り調べは3日後まで続ける。そのあとに処罰だ」
「貴様……!」
「本来あなたのもとで働く分だった15日分の違約金。お願いできますね?」
「く……行商組合にいけ。そうすれば俺の蓄えからその分は出る」
「警備さん、これは問題ないですね?」
「ああ、問題ない。公式の記録に残る」
あれ、それはそれで困るかも
ただ、俺たちの会話と思考は妨害された。
「お前が、組合にたどり着けるとは思わないがな!」
行商人が大きな声で叫ぶと、彼の右腕が爆散した。
「えっ」
俺と警備兵が爆発での混乱に陥っている間に、彼は血文字を書き、
そのまま大きな機械人形へと姿を変えた。