26話 盗人を追いかけ、現場を押さえましょう
だいぶ悩んでるので、投稿速度は落ちるかもしれません。
エリナが右手で横向きのVの字を作る。見つけた、というサインだ。
俺には見えないが、何かを追いかけるような視線を向けている。
「いくよ」
サマンサにはここで待機してもらい、守り損ねるということがないように。少し不服そうだったが、3人なら何とかなる、と言ってくれた。
エリナが追いかけているものは、別の宿から貴族街に向かっている。
「こっち、このあたりで待ってましょ。迷彩のレベル的に、盗んだものも不可視状態になると思うから、合図する。3人いるから、1対1ね」
「りょーかい。二人とも、攻撃準備しておいてくれ」
「「わかった」」
しかし、待つのは苦手だということが分かった。緊張感で思考が逸れる。
警備詰所には看破系のスキルを持っている人はいなかったのか?とか、民間依頼するなんていつから取り逃していたのか?とか。
行けない、と思いつつも考えてしまう。
「上がってくる。私が動いた3秒後に指示する場所にナイフを投げて。マークは煙突の横30センチ、シーナは屋根の左端から内側に2m。私は下。
……
来たね」
そう言ってエリナが下に飛び降り、「誰か」を上から殴る。俺とシーナは、[刃物の心得]と[戦闘術・ナイフ]で投擲する。
三つの悲鳴が聞こえ、落ちる音が二つ。
持っているものは隠せても、流血は隠せないようだ。
追いかけ、捕まえる。見えない相手に対し馬乗りになり、腕をつかみ剣を構える。
「現れなければ刺す」
人を刺したことはないが、今ならできそうな気がした。あとで後悔はするかもしれないが、少なくともこの場では躊躇うことはない。
「ま、待て、分かった」
男の声がして、一人の女が……え?
声は打ち合わせの時に竜退治の自慢をしていた男だったのだが。
あんたは一体何者なんだ……?そのあたりはいいか。
二人の方も回収できたようだ。詰め所に向かって報酬を受け取るか。
尋問等に立ち会わせた結果、案の定というかなんというか、行商人と結託していたらしい。各地の拠点で窃盗を繰り返し、商人が売買を行う。商人の方は荷物検査があるが、冒険者の方はそうでもなかった穴をつかれたらしい。
どうして窃盗をしていたかというと、呪いスキルを受けたかららしい。
[異性化浸食/Lv--]。
呪い状態を解除できる人に5032億クラピを要求されたそうだ。
もともと女だったらしく、夜の短い時間しか本来の姿に戻れないらしいが……まあ、窃盗は窃盗だ。
ちなみにその呪いを解除できる人というのは先ほどの行商人だそうだ。
これはこれでひと悶着ありそう。
「呪いなら、私が解除できるぞ」
そう声を上げたのはエリナ。
思い出した。こいつは元聖職者だ。
何か呪文でも唱えるのかと思ったら、3人に金的を食らわせた。
……正気かこいつ。
だが結果として悶絶した3人から、呪いスキルが吐き出された。こっちのほうは詰所に処分を任せ、報酬を受け取る。
詰所はその商人に対して捕縛指示を出していた。
「あの、少しいいですか?」
俺たちもその商人に対して用事がある。