20話 予想もしていなかった相手なので、混乱しています
内容も執筆速度もインフレさせたい作者です。
「機械」。
俺をここに送り込んだ神様は、魔法のある環境下での科学の発展速度を観測するために作った世界、それのデバッガーとして役割を果たせと言っていた。
つまりは人やそれに連なる種族がどのように科学と魔法のバランスをとっていくか、ということだと勝手に考えている。
つまり、俺のおかれている状況。
「野生の機械」なんてものが出現し、あまつさえ相対してるなんて、どう考えてもおかしいのだ。
「え、何あれ?鉄のゴーレム?」
サマンサが問う。エリナもシーナも似たような反応。
つまり、科学はまだ一般的に浸透していない……と考えていいだろう。
というか、こういう自立型のロボットは元の世界にもないはずだ。
鑑定をかけてみる。
「ダンジョンアンライブ・スチームワークゴーレム」。
説明にはなかった「アンライブ」の文字。蒸気で動くゴーレム、という名目になっているようだ。
スキルは……[蒸気機関/lv40][魔力石炭化/lv20][水生成/lv20]。装備品も見てみたが、魔法に対する防御や貫通攻撃は備えていないようだ。
「どーすんだ、あんなの見たことないぞ、現物も、歴史の本にも、生き物図鑑も」
「大丈夫、腱も首も落ちないが、ゴーレムだ。だったらどうにかなる」
そう、大丈夫だ。いつまでも動けるような感じではあるが、こいつはゴーレムなのだ。そして、機械なのだ。
つまりぶっ壊してやればいい。
「前の作戦通り攻撃は俺が受ける。シーナ、ロープとかがあったら足をかけてやってくれ」
「了解」
「サマンサはエリナの補助。それと、あいつを熱してくれ。スキルの水生成するぶんをかたっぱしから蒸発させてやってほしい」
「おっけーッ……!」
返事を聞き終わる前に機械が突っ込んできた。
「作戦くらいは最後まで練らせてくれよっ……!」
スキルを発動し、受け止める。ダメージは100万程度だが、それでも痛みは通り抜けて襲ってくる。
足の動きを確認すると、後ろ右足にしっかりロープがかかり、壁際に刺さった杭とつながっている。
つまり、シーナの行動が効いたうえでの100万ダメージか。
まともに受けたら消し飛びそうだ。というか、無効を張っているのにダメージを受けている。
効果がないのかスキル看破できていないだけなのか……まあ、張っておいたほうがいいに決まってる。
機械、ゴーレムだから当然疲労は起こらない。まあ、肉体的な疲労はダンジョンの仕組みで俺たちもないが、精神的な疲労は当然起こる。一向に攻撃を緩めない機械に、俺は焦燥感を感じていた。
壊せばいいといったが、ダメージが入っているようには見えない。鑑定してもHPが見えないのはどうしようもない。
空焚きを起こさせ、内からも外からも熱してやれば壊せると思うが……
焦っていたのは最初からかもしれない。未知の敵だったのだから、逃げればよかった。あとからそう言ったが、ダンジョンのボス部屋は逃げられないという。
俺は、奴が動けなくなるまでとにかく攻撃を受け続けた。