2話 いいところを見せるはずが、空回りでした
書き溜めはもう少しあります。
誤字、重複表現等あるかもですが、よろしくおねがいします
「つ、疲れた……」
「お疲れ様ね。狼の体当たりってバカにならないでしょう?」
ただの体当たりで3000万近くのHPが減った時はどうなるかと思った。四発受けられないじゃないか。あと、火炎魔法にもびっくりした。狼が火を噴くのは反則では?と思ったがサマンサ曰く良くあるらしい。
「そっちは結構戦闘慣れしてるんだな……」
「田舎で狼退治はしたことがあるからね。それにしても、あなたホントに何も知らないのね」
「はは、その辺は事情が。報酬は……」
「ああ、折半でいいわ。だってまた無茶な依頼を受けて死にそうだし。その代わり、夕飯を奢ってくれるかしら」
「その程度なら、なんとか」
報酬は、狼の群れを退治したことによる3200万クラピ。これを折半だ。クラピというのが通貨単位。
サマンサ曰く、500万あれば1日3食と宿宿泊はできるそうだ。旧ドイツかよ。
とりあえず、3日分の生活費はあるわけだが…
「ああ、それなんだけどね?しばらく一緒にパーティ組まない?二人じゃどうしようもないから、あと2か3人くらいは探さなきゃだけどね」
「いいのか?そっちよりも若輩で、足手まといなのに」
「地方から出てきて仲間が欲しかったのは私もだし、ちょっとだけ威張れて嬉しかったし、それにあなたといたら飽きなさそうだし」
「はは…そっちさえ良ければ、いろいろ教えてくれ」
「ええ、パーティ成立。例えばどんな事が知りたい?」
「周辺の地理について」
サマンサの曰く、今自分達がいる場所は、アルダーという国の北部にある、第124都市。
アルダーは街をできた順番に数字で割り振る風習があるらしく、固有の名前は原則ない。なんらかの原因で街がなくなっても、番号を寄せたりはせず、その番号が空白になる。現在の首都は第14都市だそうだ。
王政を敷いているらしく、国が成立して2050年、王は現在4007代目らしい。
一年に2回は交代してる計算になるじゃねえか、と思ったがサマンサは気付いていないようだ。
これは神様? への報告案件かな。
貴族は主要な50の領地を交代で受け持っている。こちらは10年単位。腐敗や癒着を防ぐためらしいが、上手く回っているかは民草には噂程度…
「とまあ、こんな感じかしら?」
「とりあえず…食事代と宿代を引いて1300万はあるんだけど、装備を更新したいからまた新しい依頼を受けたいのだけど」
ちなみに、金貨や銀貨ではなく、身分証が直接クレジットカードの様な役割をするらしい。あるいは電子定期か。
「攻撃力はそれなりだけど、耐久がいくらか不安だものね。値引き交渉は忘れない様にね」
金銭感覚おかしくなりそうだから付き合って欲しかったけど、まあいいか。
レザーアーマー。今着ているものと同じような見た目のものが300万2500。牛革4枚重ねの、それなりに丈夫なもの…だと思っていたが。
牛革の間に鉄板を挟んだものが800万、それと手足が無防備な状態なのでそちらの防具も。
合計1100万。ナイフ1本くらいは追加で買えるかと思ったが、微妙に…100万ほど余裕が足りなかった。
100万が微妙になってしまうのも変な話だ…と考えていたら、古い防具を下取りに出すならオマケにしてやるといわれたので交換してしまった。
まあ、防具が二つあっても仕方ない。
のこりの200万は、明日の食費になればいいか。
サマンサにいろいろ任せているのは申し訳ない。少しくらいは役に立てるといいが。
1日目の夜。風呂の様な風習は冒険者には流行っておらず、水入りの瓶とタライ、手拭いが部屋にあった。
これで体を清めろって事か。
「そうだ、報告と一緒に文句も伝えておくか…」
拭き終わったあと服を着て、すぐに寝てしまった。
「やっほやっほ、1日目おつかれさまー、だね?ちょっと忙しくなりそうだから、手短に」
「いろいろ言いたいことはあるけどあのインフレはなんだっ……」
チート無双できなくなったじゃないか。
「え?わたしこれでいいのかって聞いたよね?」
「強すぎるけどいいのかっていう意味かと思ったんだよ、ステ変更を…」
「あー、それは無理。バックパックの容量増やすくらいしか干渉できないよ」
「くっ……じゃあそれを頼みたい。あとは報告で、王が1年に2人は死んでる、もしくは引退してる計算になるんだが」
「ああ、それはあってるよ」
「どういうことだ?まさか寿命が短く設定されてるのか」
「あー、違う違う。1年が33582日なんだよ」
「なんであらゆる数字がインフレしてるんだよ!!」
「そっちの方が余裕があるじゃないか!小数点とかめんどくさいんだよ!」
研究者の言葉なんだろうか、ホントに。
「まあいいや…不具合じゃないなら。バックパック、お願いしますね」
「はいよー。次の通信は11日後に」
夢が切り替わる様に風景が歪む。そこから先は普通の眠りに向かった。