19話 ムカデをやり過ごしたので、奥に進みます。
どんどん行きます。
さて、ムカデが通り過ぎ食い荒らされた地面。進みやすい道ができている。
だが流石はダンジョン、というべきなのか。それともこの世界だからか。
食い荒らされていた所には、もう新しい草木が芽吹いている。半日しないうちに元に戻るんじゃないだろうか。成長速度までインフレしているのは流石だ。
とはいえ、さすがに今はまだ草木が少なく歩きやすい。植物系の魔物も一掃されてしまったはずだ。
「罠もだいたい破壊されている、私の出番はなさそう」
というかあのムカデは目的方向からきたのか。シーナがいなかったら、なんて想像するだけで恐ろしい。
粘土はもう食いたくない。
実家暮らしの時のカップ麺やカレーが懐かしい。
就活に失敗した時に母親が作ってくれたスープが飲みたい……まあ、それは叶わないか。
なんだかんだで日本の食事がしたい、くらいではあるが。
ラーメンってどうやって作るんだっけ?今度神託部屋に呼ばれたら教えてもらおう。
そんなことを考えながら進み、さらに2日経って50階にまで到達した。
息切れとか疲労が無かったが、ダンジョンが疲労のみを吸い上げるスキルがあるとかいう噂だそうだ。
宝石にすらスキルがあるんだからおかしなことはないか。
ちなみに、なぜそういうスキルを持っているか、というのはまた別の噂で、奥深くまで招きこんで絶望的な敵をぶつけるとか、逆に、そういうものに遭遇しても逃げ切れるように、だとかいろいろだ。
ダンジョンに意思があるのかはわからないが、それもまた噂……収穫がある以上はだれも詳しくは調べようとしない、といった感じか。
50階層のボスは、基本的にケンタウロスやミノタウルスが出現するらしい。ボス部屋は複数存在し、基本的にリセットや再出現の周期の間に全滅するようなことはない。
ちょうど出現の周期も終わったみたいだし、入る前に打ち合わせを。
ケンタウロスが出た場合足を狙い、ミノタウルスが出た場合は腕を狙う。
どちらも魔法無効と反射を備えているので、サマンサは補助魔法のみの使用。
ケンタウロス、ミノタウルス両方のの振り下ろし攻撃には無効貫通があるので必ず避けること。
貫通は本来与えるダメージを与えたあとに、軽減された分をもう一度食らわせる…簡単にいうなら2倍ダメージのスキルだ。
倍率がおとなしい。
回復したり、魔法攻撃をしてくることはないから、弓を持っていない限りは飛び道具の警戒はいらない。
突進、振り下ろしはいずれの魔物も使ってくるので、対応を間違えないように。
突進は俺がスキルで受ける。後ろまで挽潰される可能性があるので絶対に受け止めること。
振り下ろしは単体狙いなので、俺がヘイトを引き受けること。なんなら割って入ってでも攻撃を妨害し、剣で受け流すこと。
作戦をいくつか練ったあと、俺たちはボス部屋に入る。
俺たちを迎えたのは、ケンタウロスでもミノタウルでもなかった。
スミノタウルスの上半身、ケンタウロスの下半身を持つ、2種の混ざった「機械でできた」魔物だった。