145話 己の身の丈を知りましょう。
[メタルリザード/人間の血]。鑑定することで見えた名前にはそう書いてあった。レベルは、178838と表記されていた。
一瞬見えたスキルには[気配遮断][探知遮断][気絶不可][睡眠不可][不調耐性][健体][剛体]、HPは349Gと表記されていたが、それ以外のステータスやスキルは確認できなかった。
明らかに自分たちよりも強い数値。龍達と違い、パッと見てどのくらいの差があるのかわかりやすい。俺たちのレベルはようやく全員が700を超えたところで、高くてもエリナの835だ。単純な数値では俺の250倍を軽く超える。
HPに関しては400……500倍か? 比較するのも馬鹿らしくなってくる。分かるのは、逃げ切れなければ死ぬだろうということだ。相手のステータスが分からないのでもう詰みかもしれない。
変な警戒心を持ってしまったのならば、するべきは奥に進むのではなく諦めることだったか。
どうすれば生き延びれる? 生命の危機という奴だろうか。思考が正しく回らない。龍の方に出向いた時だって、こんなに恐ろしいとは感じなかったはずだ。
一呼吸。するぐらいの猶予はあるか。
死ななければいい。こいつの執念がどのくらいのものか知らないが、腕を捥がれようと腹を抉られようと、頭が無事で地上に上がれば蘇生してもらえるはずだ。
俺はハンドサインでみんなに下がるように指示する。戦闘は起こらない。相手が攻撃してくれば蹂躙されるだけだろう。殿の仕事ができる位置にいたのは幸運だったか。
サマンサとメモリがいくつかの補助魔法を瞬間的にかけてくれた。気休めにしかならないが、全員が逃げた後に俺が逃げるくらいはしたい。
念じるだけで効果が出るような一部の補助魔法以外は受けられなかった。トカゲの姿がブレて見えたかと思うと、俺の剣は上方に跳ね上げられていた。だが、その手は離さない。筋力補助で強引に跳ね上げを抑え込み、どこから来るか分からない攻撃を受ける。剣先が甲高い音を数度立てるが、耐えるのが限界……相手の姿が一瞬歪んだように見えるだけで、剣を数度動かし、なんとか受けている。
剣に一度の攻撃を受けるだけで……否、一瞬の攻撃をうけるだけで、視界の端のステータスでは体力が730万くらいずつ溶けている。
腕が痛い。跳ね上げを抑え込むだけでも疲労が広がっていく。攻撃を受けるか下がるかできないか、と考えたところで思う。
なんで、受け止めることができているんだ?