141話 トカゲとの戦闘です。
トカゲはこちらを睨みつけている。数発の石弾を、散弾のように吐いて撃ってきた。
「うわっ」
サマンサの風魔法で軌道を逸らしてもらう。これは遭遇する前に前以て言っていたことだ。小さな粒の石は、風で逸らしてほしいと。
トカゲが昔テレビで見た、ガラガラヘビのような音を立てながら、人の頭くらいありそうな岩玉を吐いてきた。
それを、剣で受け止める。異様に高い金属音のような音と、尋常ではない痺れが両手に襲い掛かる。このまま振れば俺の手は武器を手放してしまうだろう。
なので、そのまま手放す。
殆どの動物は、飛来するものが危険かどうか判断するために、一瞬そちらに目を向けてしまう。このトカゲもそうだった。
そのスキは、俺でなくシーナが突く。トカゲ達の目を、ほぼ同時に6本のナイフが射貫く。
「サマンサ、メモリ、次を頼む! 仕込みが決まったらエリナ、任せたぞッ」
投げたナイフは瞼に遮られるよりも早く彼らの目を塞いだ。もしこのまま頬っておけば、この世界の事だ、いつの間にか回復しているだろうが……俺たちの目的は、こいつらの捕獲、もしくは討伐なのだ。情け容赦は必要ない。
眼を潰され怒り狂うトカゲだが、およそ正確にこちらの方を見ている。が、その顔の向きは微妙にずれている。俺が剣を拾いなおしても、それに反応する動きはない。
ピット器官があると踏んで、サマンサとメモリに熱を起こしてもらっていた。少し離れた場所に、人型の熱源を用意してもらっていたのだ。おかげで熱くて暑くて仕方ないが、無力化に成功した。
トカゲ達が石弾を吐きつけてくる。うん、予想通りこっちには届かない。砕け散った石はこっちのほうにとんできてるけれども。
相当熱いし暑い。シーナとアイコンタクトをして、トカゲ達の頭部を打ちのめす。気絶も転倒もしないので、2度、3度と追い打ちを立てる。
何度目か分からない手の痺れを実感したときに、ようやく彼らは気絶してくれた。
「ふぅ、さて……」
こいつら持って帰るのかよ……正気の沙汰とは思えない。気絶しただけで死んでいないからバックパックに入れることもできないし。
「休憩室にあるもの使っていいって言われたでしょ。荷車とかあるんじゃないかしら」
「なるほど」
荷車はかなり大きく、3匹乗せても重量的に問題はなさそうだ。
俺達がこれを運ぶこと自体の難易度は、それほど変わらなかったという追記をしておこう。