138話 たまには運が良くないのでしょうか。
ギルドのほうで少しばかり騒動があったらしい。いくつかのパーティ、つまり俺達や、緊急性の薄い依頼を受けているところに対して招集命令が下った。違約金の方はギルドが負担してくれるということらしい。
剪定の方は9割以上終わらせることができていたので、違約金や報酬には影響しないとのこと。拘束時間も一日短くなったし、全体的な運はやっぱり良い方なのかもしれない。とはいえ、サマンサの運の値を見れば、パーティ全体では平均化されそうなものだけれど。
さて、呼び出しの理由。俺たちが選ばなかったいくつかの依頼のうち、輸送護衛と採掘で、複数種の大型の魔物や動物が出て、人的被害が出たらしい。何人かは蘇生するために必要な肉体の量が確保できない……まあ即ち捕食されてしまったとか、潰されてしまったとか、そういうことらしい。
鉱山や路はどちらもこれからも使うので、それぞれどちらかに赴いて退治、討伐してほしいとのこと。
きつかったと思った剪定作業の方が安全だったとは……ああでも、結局今から向かうからあんまり関係ないのか。そう考えたらあんまり運は良くないのかも。
鉱山の方で出たのは鉄皮や石皮のトカゲ。北の森にある鉱山の中で複数現れたらしい。街路の方には、ゾンビの群れ。個体数的に、リャナンシーやヴァンパイアが複数いる可能性が高い、とのこと。
うーん、トカゲのほうの相手をしたい。スプラッターを体験したいわけではないし、吸血や捕食されたらそのまま彼らの仲間入りをしてしまいそうだし。トカゲのほうが人気かと思ったが、数が多いとのことで経験値の獲得が多いだろう、という推測からゾンビ側の討伐にもそれなりに人が向かった
「皆はどっちがいい?」
「私はトカゲかな。ゾンビはともかく、吸血鬼のほうはまだ相手にしたことがないし。聞いた話だと南の街道に出たらしいから、あっちだと日除けがないし……日光耐性か、あるいは弱点が外れてるかしてるから、調べたセオリー通りにも行かないだろうし」
「うーん、トカゲ……いや、ゾンビで。硬いやつは殴ったら痛いからな。途中で効率が落ちて押し負けると思う」
「私は……うーん? ゾンビの方で。人型なら殺せるでしょう」
「私は棄権ですよっと」
おい、それでいいのか?
シルバーの選択によってこのパーティがどちらに向かうかというのが決まることになった。
その結果、腐肉は喰らいたくないという意思表示を受け、トカゲのほうに向かうことになった。