133話 剪定作業が進みません。
HJ文庫大賞1次選考で落選しました。
剪定作業というか、最早伐採の域に届くんじゃないだろうか。外側に枝が出ないように、ある程度葉を残しつつ……相当無茶な作業なんじゃないだろうか。ノコギリがあってもうまくいかない可能性が高い。
俺の持っている剣なら相性は悪くないかもしれないが、シーナのナイフではキツそうだし、エリナは……なんだろうあれ。手甲になにか仕込んであるのか、それともスキルか? 拳で切断している。
サマンサとシルバーは枝に火を放って焼き切っている。燃え移りやしないかと心配だったが、生垣の方は[延焼耐性/Lv633]なるスキルを持っていた。火炎耐性ではないので効果が違うのだろう。メモリも同じように焼いていた。
3箇所で火を扱っているもんだから、当然暑い。暑いというか、もはや熱い。ついでに天気がかなりいい。元の世界にいたときほどではないが。夏の陽気といって差し支えない程度には日差しもきつい。なんでこんなときに剪定の仕事を受けたんだ、絶対許さねえ。
自分を許さなくなったところで依頼が終わるわけでも消えるわけでもなく、ただひたすらに作業をしないといけないわけだが……切断耐性はないみたいだし、少し試してみるか。
水魔法を行使。ウォーターカッターのようにしてしまおうと撃ち出す。
「っ……と、」
反動が重い。自転車に乗っているときに塀にぶつかったときぐらいの衝撃がある。これは太い枝……幹? を相手にするとき以外は使えなさそうだ。
そしてもう一つ。大きなハチの巣を落としてしまった。自宅にいる巣箱の蜂とは違う、野生のもの。外見こそ普通の蜂だが、巣に見合った大きさ……一匹一匹がシルバーよりも大きい。
え、どうするのこれ。斬撃飛ばしたりできないかなーとか、ウォーターカッターで失敗したんだから狙い撃つなんて無理だよなーとかいろいろな考えが頭を巡ったが……
まあ咄嗟にどうにかできるはずもなく、皆が巻き込まれない方向に逃げるくらいしかできなかった。
枝やナイフ、火の玉が飛んできたりして、怒られてるのか蜂退治に協力して貰えるのかはわからなかったが……蜂相手……否、集団相手に戦えるようになっておいたほうがいいんじゃないだろうか、という考えが頭をよぎった。
体制を整えられるだけの距離を取り、一呼吸。
20匹近くいるそいつらと向かい合い……向かい合ってくれ。あっという間に囲まれたが、技量的には仕方ない。
早く倒して、剪定作業に戻ろう。