128話 キノコの試食をしてからです。
青いキノコ、というものを見ていると、なんだか食欲が削がれてしまう。でも、見た目程度では四の五の言っていられない状況ではある。どちらの街でも食料に関する問題は深刻な状況なのである。
ということで、軽く炙って試食することに。
「すこしのしおをつけておたべください!」
ということなので助言に従う……うん、塩に反応して何らかのスキルが出現したりはしていない。焼いてあるキノコの方にも5000近くのHPが残っているのが気になるが。
「粘土やレンガには表示されていなかったような」
「いやいや、あれらは腐らないでしょう?」
つまり賞味期限のようなものか。過熱している最中のエントシロップも、変動していたせいで見えず、そのあと鑑定していなかったか。
さて試食。……シイタケだな。色はともかく、だいたい見た目の通りな訳か。
味がいい、というスキルがあったが、特記されるほど旨いか? いや、決して悪いわけではないのだけれど。
……もう一つ、と思い手を伸ばしたが途中で思いとどまった。待て。落ち着け。
この[味がいい]のスキルは、無意識にこれは旨いものだ、と勘違いさせるもの。
「つまり麻薬じゃないか」
いや、実際には違うかもしれないが、中毒状態になるのなら似たようなものだ。このままでは提供できなさそうだ。
「ファンガス1号、スキル無しのキノコは作れるか?」
「い、いちごうってわたしのことですか? えっと、わたしたちがしゅうかくするとスキルがつくので、みなさまがしゅうかくすればもんだいないかと?」
倉庫の扉を開けて、無作為にキノコを一本毟る。鑑定した結果、今度こそ何もスキルがついていないと思われる。名前の方も青シイタケだった。……いや、食ったほうはどんな名前だったか見ていなかったな。スキルばかりに気を取られていた。
とりあえずの方針として、収穫は俺たちのうちの誰かがやる。収穫以外の作業はファンガス達にやらせる、ということになった。
「わたしたち、たべられない……ですよね?」
「スキルつきキノコや毒キノコを栽培したりしなければ」
何か良くない爆弾を抱え込んでしまったような気もするが。ちなみにファンガス達にとってキノコは親族か何かじゃないか、と思ったが、彼女たち? にとってキノコは家畜みたいなものらしく、深く考えたことはない、と言われてしまった。
とりあえず、収穫時にチェックするとして。とりあえずそれぞれの街に売り出せそうだ、と全員の合意を得た。少し忙しくなりそうだ。