124話 少し気になった事ですが。
住民は殆ど全員戻ってきた、と考えられる様になってから数日。食料供給はまだ外部からの輸入に頼らざるを得ない状況だった。
というのも、畑の大半が痛んでしまっていたからだ。家畜類は一緒に行方不明になっていたため、まだ飢えたりはしていないが、人の食糧の方だって不安定なのだ。痩せる前に屠してしまおう、という状況である。
その輸入に頼らざるを得ない状況で、南側からの都市の輸入が途絶えた。自分達と同じように失踪か、あるいは嫌がらせか、と噂があがったが、そうではないらしい。
作物、家畜が『呪病』にかかり、輸出できなくなってしまったとか。食べた人に対し、呪いの種類によった病気を与えるというものらしい。呪病に感染した食物を摂取した対象に感染し、『呪い』を解くまで病気の症状や感染が収まることはない。
呪病の源になった池に対して、感染していない食料を使った調理済みの料理を、20日間に渡り奉納し続けること。今回の場合はそれが対処法らしい。50日以内に解決できなければ、感染が早かった順番に呪いを受けていく……なんで日数までわかるんだろう? と思ったが、『呪病』にはいくつか決まったパターンがあるらしい。
つまりどういうことなんだ……?
「食料が輸出できず、むしろ輸入しないといけない。それが南の都市、第322都市で起きてること……よ。水源経由では感染しない場合が多いから全員が全員感染しているわけではないけど、どの瞬間に病毒が発生したかまではわからない……というのがあるから、全速で運送中のものを回収中だとか」
もしかしたらこの都市に運送されたものがすでに呪われていた可能性もあるのか……?
それは、色んな意味で大変な騒動になりそうだな。
「そうだな。だから私達□以上の冒険者グループに対して依頼が届いてるんだ。『協力してくれ』ってな。あと、△以下だったり、他の依頼を受けるような職業にない人には口外禁止になってるみたい」
「まあ、受けないわけにはいかないか……」
発覚した日付が数日前なら、もう食ってしまった可能性は高い。呪いの効果がどんなものかは知らないが、わざわざ依頼を出すということはきっと碌でもないのだろう。
「腐敗しない範囲で感染していない食料を持ち込んでくれるとありがたい……よく言ってくれるねぇ」
例の透明な川魚や、鶏肉とかを途中で採取しながら……と、鳥の方はこっちの街が困るか。南側の都市付近にたどり着いてから、その時に周囲を探索して持ち込めばいいか。