117話 この先を少し考えます。
都市の人々が戻ってきている……つまりは、ある程度の安全性が戻ってきているということだが、一度街を出る、ということを決めた以上、簡単に前言撤回するべきではないんじゃないんだろうか?
そう思ったが、ある程度地理も知っている土地の方が生活しやすいのも確か。
「悩むくらいなら今は決めなくてもいいんじゃない?」
そういったのはサマンサだ。今は仮で滞在しておくけれども、もし過ごしにくくなったらまた移動すればいいんじゃない?とのこと。
なるほど、一理ある。ということで、当面はこの都市に滞在することに。家がもともとあった位置に車を止めて、変形を解除。動いていないかのように元通りになった。
庭の広さに対してエントが多いのではないだろうか……と思ったが、蜂たちと共生しているのか、片方の蜂巣箱はちゃんと蜂蜜を集めてくれるようになった。あと、1体? 1本? のエントが、少し身を細くしてから花を咲かせるようになった。
エントの蜂蜜か……鑑定してもエントの花の蜜とは出ていなかったので、まだこれから……と、期待してもいいのだろうか?
ドラゴンみたいに変化していた蜂の方は、進化だかなんだかわからないが、『ドラコニックビー』という名前に変わっていた。一体一体がレベル50~120くらいはあるみたいで、たぶん群れで襲ってきたら俺にはどうすることもできない。幸いなことに飼い主認定、あるいは群れ認定されているのか、他の原因があるのか、俺達5人と1匹、それからエントともう一つの巣箱の蜂が襲われることは無い。
蜜を回収しようとしたときも特に集って来ることは無かったし、容認されているのだろう。
前みたいにダイヤが取れるようなことは無かったが、10グラムくらいの金が集まっていた。
採掘でもしてるんだろうか、こいつらは。
庭に穴が開いている様子はないんだが……もしかしたら、遠征みたいなことをしているのかも。こんど確かめてみるか。
とりあえず、当面は再びこの街で暮らしていくことに決まった。頭の中が少しすっきりした、と思う。
今日は特に何かをすることもなく一日を終えることになりそうだ。
「おーい、夕飯はどこに食いに行く?」
「いつもの宿でいいんじゃないか?」
エリナの問いかけが聞こえた。それに応えつつ、玄関へ向かった。