115話 うまくいくかは半々ですが。
石炭。厳密にはそれだけではないのだが。化石燃料だとかなんだとか言われているが、名前に石と付けられている。つまり、土魔法の対象になるんじゃないか? と考えられたらしい。らしい、というのも又聞きだからだが。
石炭は少し前までは煤の多く出る燃料、という考え方だったが、機械が出現し、燃料に使われる、ということでいくらか研究されたそうだ。
結果、都市の下に小さな規模の鉱脈があることが判明。その時は採掘されなかったが、今回必要であると判断。土魔法で土を壁にしつつ、石炭も表に掘り返し放火範囲に巻き込んだ、ということだ。
壁が分厚いせいか、悲鳴などは聞こえてこない。しかし、離れていても感じるほどの熱が体に届く。
……これに焼かれるとか、あんまり考えたくないな。たぶん死体もまともな形で残らないだろうから、蘇生も難しいだろうし。
最初の炎は魔法だが、延焼していく炎は魔法の範囲ではなくなっている。物理無効や反射では熱を無効にできない。熱無効と物理無効系を同時に持っていたとしても、単純に酸欠で死んでしまうんじゃないだろうか。
ゴーレム類の呼吸しない魔物が物理と熱を無効のスキルを持っていたら、その時は殴りに行けばいいだろう。
まあ、無効スキルとはいえレベルが設定されている。ある程度を超えてしまえばスキルを貫通してしまうし、この熱なら生き残りを警戒する必要はないはず。
あとは、推定魔神がどこにいるかどうか、だが。
『あっつ! あっつい!』
壁の中から声が聞こえてきた。心配いらな……いや、違う。さっき壁が分厚いから音が聞こえてこないと考えた。
つまり、これは幻聴。アイツがどこからか俺の耳、もしくは脳に直接聞かせている。
鑑定、鑑定、鑑定。
「皆、魔神は見つかるか?」
猫目、探知魔法、敵性体把握。メモリのスキルは確認していないが、それぞれ探知できるスキルは持っているはずだ。
「見つけたッ……」
一番最初に声を出したのは、以外にもメモリだった。いる位置が、認識として共有される。
そいつの方向に目をやる。だが、そいつはもういなかった。
『楽しかった、また遊ぼう』
そう書いてあるメモ書きが風に飛んできて、炎に炙られたかのように焼失してしまった。
……面倒な奴に目をつけられたのかもしれない。
半日後、つまり夕方。都市の住民たちが少しずつ戻ってきている、ということを、他の地域を調査している冒険者たちから聞くことができたらしい。