108話 見えないので対処が難しいですが。
7月10日くらいまで投稿頻度が落ちると思います。
「なあ、エリナは見えてるんだよな? どういうスキルだと思う?」
「猫目では見えているから、たぶん迷彩系だとは思うが……あの大きさの迷彩は、あんなに上手くいかないはずなんだ」
「それに、魔王って結構弱かったじゃない? 経験値が入らないくらいには。だから、今説明されたあの大きさにまで育っているのが不自然な気もする」
「ムカデにも負けるようなやつが、あそこでどの魔物にも攻撃されていない……っていうのは、やっぱりおかしいと思う」
「私は鳥に襲われてるのを見たわ」
「雨の後の水たまりで溺れてたな」
魔王がどれだけ弱いかの暴露がされていくが、重要なのはそれではなく。どうしてそんなに弱いはずの存在が、あそこまで大きくなったのか。それと、その元凶。
たぶんだけど、魔物の大量発生と大型魔王の出現の原因は同じ……だと思う。これは根拠のない希望的観測だけども、たぶん予想は外れていない。というか、同じであってくれという思いが強い。
「でも、どうするの? あれだけの魔物がいると、近づくのは難しいと思うの」
確かに、個別個別の魔物が弱くても、あの数は普通に押しつぶされる。でも、だったら押しつぶされる前に押しつぶせばいいのだ。
「車を出すぞ。強そうなやつは放置で、弱いやつは挽き潰して。ヒットアンドアウェイで行くぞ」
集合時間前だが、一度門に戻り車を回収。門の生存組の中には、猫目持ちがいなかったらしく、大きな魔王の存在は気付かれていなかった。が、こちらでもやはりというか、魔王は弱いものと認識されていて、その大きな魔王が『見えない』スキルがある、というだけで驚かれた。
どれだけ弱いんだ、普通の魔王は。
車を回収して門の中に。というか、どう考えても最初から乗って入ったほうがよかったな。移動力がだいぶちがう。
「メモリ、エンジンの方よろしくな。エリナは魔王の位置探知、シーナは司令官ぽい魔物の探知を。サマンサは魔王の方に、シルバーはほかの魔物に攻撃を」
「わかったわ」「おっけー」「りょーかい」「ほいほいっと」「わぉん」
それぞれの返事が聞こえてくる。あと、そうだ。蜂巣箱も屋根上に出しておく。
サマンサ、エリナ、シルバーは車の上、俺、シーナ、メモリは車内。
さーて、少し派手にやってしまいましょうか。
エンジンをかけなおし、アクセルを踏み込んだ。
魔物たちの視線を感じるが、そんなものはお構いなしだ。