103話 早く動くといったはずなのですが
ヘタレとイケイケの間くらい、ヘタレ寄り。
気が付いたら昼前だった。早いうちに依頼受諾をしておくという話はなんだったのか。そして頭が痛い。
夜中に飲みすぎたか。蒸留酒を呑んでいたあたりから記憶がないのだが、そんなにきついものだったのだろうか? 果汁で割ったから思っていたよりも飲んでいたのかもしれない。
甘味が欲しいといったせいか、傷むのが早いような果物も多数あったので、なんとなく勢いに任せて結構飲んでいたような記憶が……全部思い出せた訳ではないけれども、だいたいのあらすじは見えてきたような……いや、酔っぱらっていた時の記憶なんてアテにならん。ええい、目を覚ますか。
と、そこで気付いた。
左腕をシーナが、右腕をサマンサが抱き枕にして、シルバーが足の上で寝ている。
……身動きが取れないんだが、どうしてこうなっている。やっぱり酔っぱらいの記憶はアテにならない。
幸か不幸か、お互いの服が脱げていないのは見えたので、おそらくではあるが一線を越えたとかそういうことは無いだろう……ないよな? 超える時がくるなら意識が覚醒している時がいい。
……まだ興奮しているのだろうか、思考が怪しい。
抱き着かれている腕に、服越しに伝わる柔らかい感覚。もぞもぞと動かれるたびに当たる位置が変わり、胸だけでなくお腹や下腹部の感触が来る。二人とも、筋肉よりも柔らかさを強く感じてしまう。
アルコールのにおいの混ざった緩い吐息が、俺の首筋や耳元に届き、ゾクゾクとした感覚がよからぬ感情を掻き立てる。
あの、ふたりとも服はだけてますよ?胸元とか首筋とか、見えそうになってるんですが。
ここで気付いた。エリナに膝枕されている。
八方塞がりと諦めて心を無にするか、いっそ振り切って全員抱き込んでしまおうか。
メモリ、笑いながら見てないで助けてくれ。お願いだから。
目線で合図するも庭に引っ込み、蜂と木の世話をしに行ってしまった。どうすればいいんだろう……?
メモリはどうなっても喜ぶんだろうなぁ。
数分悩み悶えた結果、ヘタレの俺は抱きしめられている状態から抱きしめる状態になり、膝枕に甘える以上の行動をとることができなかった。どうしろっていうんだ。
それでも、こうやって温かさを感じているだけで幸せになれたような気分だ。
次があったらたぶん理性が危ないな、なんて考えながら、抱きしめを強めた。
数分後にシルバーに噛まれたことで俺が悶えるまでの間、3人の温かさと柔らかさを堪能していた。