99話 答え合わせと方針です
さて、木材が売れなくなってしまったわけだがこいつらどうしよう。飼うか? いやそれでも量は多いし、ある程度は捌いておかないとどうしようもないだろうけれど。
「で、シーナ、さっきのはどうやったんだ?」
倉庫の木たちを暴れさせるのは、結構難しいことではないのだろうか。
「起こしてやるっていうことを対価にして、暴れるかシルバーに焼かれるか、っていう取引をしたの。値切りのおかげでけっこうすんなりイケたかな」
契約の一種なのだろうか。意図的に破壊したり放火したわけでもないから、確たる証拠はつかめないだろう、とのこと。まあ、証拠はなくとも状況的に犯人だと思われてはいるだろうし、恨みは買ったんじゃないかな。
「難しいことじゃないよ。生きていれば恨みを買うし恨むことだってある。そもそもこっちが先に嫌がらせを受けたんだから、向こうは仕返しされる可能性だって十分に考えるべきだったんじゃないかな?」
「相手が聞こえていないところで言っても意味はないけどな。こういった陰口も聞かれていたら恨みを買いそうだ」
「ああいうやり方をしているところなんだし、陰口なんて慣れているでしょ。あるいは陰口だとは思わないか。どっちにしても、ああいうあくどいやり方していたら、そのうち私達じゃなくても誰かが仕掛けたでしょ」
「確かにさっきの用心棒組も、経営陣の指示よりも労働者の避難を優先してたみたいですねぇ」
「見てたんなら手伝ってくれてもよかったんだぜ、メモリ」
「関わり合いになるよりも眺めていたほうが楽しいことだってあるの。逆も然りだけど……今回は、ね? とはいえ、戦闘になるようだったら参加するつもりだったから」
「お前の基準は分かりにくいな」
サマンサとエリナは庭でエントたちをどうするか考えている。何本残すとか、どこで売却するべきか、といった話し合いが聞こえてきているが、まあ2人に任せておけば大丈夫だと思う。
「いっそ、植林場に返しに行くのもありか?」
「それはそれで面倒だし、大きいやつらが警戒しているし……アテはない?」
「あー、あー? 無くはないが少し遠いな、この都市じゃない」
「いっそ全部木炭にでもしてしまう?」
「エントをわざわざ木炭にするなんて、真珠を砕いて装飾するようなモンだぞ。他の使い道がなかった時にはそうなるかもしれないが、最後の手段だな」
少し移動することもあるか、と考えておく。
食事を取りに宿に向かったところで、俺たちが抜け出してきた都市が、兵士以外誰もいなくなった、という噂を聞くこととなった。