第3話〜巫女さんは足で情報を得る〜
前回までの話
重傷を負った萃香を永遠亭に運んだ。
そして彼女達は今この幻想郷で起きているであろう何かを掴むために立ち上がった。
後日、朝早くの人里にて
萃香が倒れていた場所を隈無く調べた。
其処は明らかに破壊の痕跡があった。
荷車はひっくり返り、地面には大なり小なりのクレーターが出来ていた。
間違いなく此処で戦闘があったのだろう…
とはいえ、ここまでの戦闘跡があっても朝方まで話に上がらないところに幻想郷の人々の強さが良くわかる。
とはいえ、ガヤガヤと周りの民衆も流石にこの惨状を遠くから眺めていた。
ソレは滅多に動かない博麗の巫女が人里に降りてきて仕事をしているからか、ソレとも、鬼の為に動いているせいか…
どちらにせよ手がかりらしきものはなかった。
地面に大きく三日月状に広がる血痕に膝を下ろして眺めた。
この跡を見る限りどうやら本当に『殺し合った』のだろう。
そうしていると魔理沙がトコトコと近付いてきた。
細い指を顎にのせ口を隠すような格好をして考えている様はまるで本物の探偵のようだ。
ちらりと睨むように私を見ると呟いた。
「霊夢、さっき気になることを聞いたんだが」
気になること?
私はその言い方に息を吐いた。
「何よ?目撃者でもいたの?私の調べた限りでは1人も…と言うかそもそも取り合ってさえくれなかったじゃない。」
「違う、そうじゃないんだぜ…とりあえず此処では言えないんだ、少し歩くぜ。」
「何よ、そんなにためて」
「良いから行くんだ」
そう押されると歩き出した。
暫く歩いてから魔理沙は切り出した。
それから暫くして私は口を開いた。
「それで?一体何がわかったのかしら?」
「…さっき聞いた話なんだが、どうやら妖怪に対して一揆が起きるらしいんだぜ。」
一揆?何よそれ。
私ははぁとため息を付いた。
「一揆?冗談も休み休み言いなさい。私達ならさておき、普通の人間が妖怪に叶うわけないわ。」
だが、魔理沙は引き下がらなかった。
それどころか身を乗り出して言った。
「ソレでもそう言ってたんだ!私も聞いた時はそう思ったんだ。けど、なんかおかしいんだぜ、鬼殺しとかなんとかって意味の分からないことばっか…」
鬼殺し?その単語が私の頭の中で留まる。
そして、ザワザワとなんとも言えない不安が胸を占めた。
「まさか、萃香が倒れたのって」
そう呟くと魔理沙も首を縦に振った。
「恐らくソイツだぜ」
鬼を殺す。そんなこと出来る人間が居るとなると話はガラリと変わってくる。
「それにしても鬼を殺す…ね。私たち以外に鬼を倒せる人間がいるなんて正直、驚きだわ。」
しかも、話の限りではその鬼殺しと近々起きるであろう一揆は絶対に関わりがある。
とは言え、聞き込みしたところで噂話程度では誰も取り合ってくれないだろうし、
何より私の評判は「悪い」何でも妖怪を倒す側の人間が妖怪と仲良くしている事が気に入らないとか、最近では博麗の巫女は妖怪の手に落ちたとか、懐柔されたとかそんな話すら聞こえてくる有様だ。
元にさっきの調査時も背後からボソボソと
妖怪の為だの、私達には何もしないだの、
結構な言われようだった。
まぁ、そう思われても仕方が無いし、何とも思わないのだけどね。
「まぁいいわ、取り敢えず永遠亭に戻りましょう、萃香も心配だし、何よりお腹が空いたわ。」
そう言うと魔理沙は呆れた様な顔をした。
「たく、こんな時にも食い意地か?でも、霊夢らしいぜ。」
そう言うと魔理沙と一緒に歩き出した。
今日のお昼ご飯は一体何かしら…
人里にて
「失礼します、巫女が嗅ぎつけていました。」
そう言うと静かに頭を垂れた。
「…巫女ですか、随分と速いですね…いや、むしろ遅かったと言うべきですかね?」
そう言うと背後からバンッとなんの前触れもなくドアが勢い良く開いた。
「へへ、博麗の巫女か、噂通りの奴だったな」
すると私が声を掛ける前に目の前の従者が声を上げた。
「ヒコ、尊様の御前だ!」
それを見てヒコ、佐々守彦は長い金髪と猿のような尻尾をフニフニと揺らしながらニヤニヤと笑った。
傍から見るとまるでスーパーサイ〇人のようだ。
「ヒュー、相変わらず頭が固いねぇ、イヌカイノタケルちゃん?」
その明らかな挑発にもたける、犬飼健と呼ばれた少女は茶色のショートと犬耳を不機嫌そうに揺らした。
その惨状を傍観しているとはたまた背後からか弱そうな声が響いた。
「全く、貴女たちはいっつも変わりませんね…ほら、喧嘩はやめてシャキッとして下さい。」
彼女の名はオミ、留玉臣と言う。
黒の長髪に前に一筋の赤い髪の毛が通ったのが特徴の何処か気弱気な少女だ。
やれ、静かにしてくださいだの、かわいそうでしょうだの、そんなやり取りを見て私はクスリと笑った。
懐かしいものだ、確か十三年前もこんな感じだった。
「あー、尊様もを笑ったー!」
そうヒコが叫ぶとタケルがウルウルとこちらを見てきた。
「そ、そんな酷いですよぉ」
そのままえぐえぐと泣き出してしまった。
そんな泣くようなことか?そう心の中で呟く。
てか、そんな事より…うん、周りからの視線が痛い。
てか、ヒコ、「うわぁー何やってんだよ」みたいな目で見るなよ…この原因を作ったのは私じゃないからね?
まぁ、傍から見たら私が悪いのか?
そう仕方なく理解すると、ハイハイと呟いた。
そして、腰から私秘伝の黍団子を取り出した。
そう、泣きそうな子には頬っぺがとろけるような絶品黍団子を上げればいいのだ。
ソレを見た瞬間、タケルの涙が一瞬で消えた。
むしろ、主観的に見たらソレは主に向かっての精一杯の笑顔を向けていた。
その様はあまりの嬉しさにハハッは…は。と笑い声が出てしまうほどだ。
「あっ主殿、」
主殿?聞き慣れない呼び方に思わず聞き入った。
「私にそんな他人行儀は入らないわ」
「わっ分かりました、実をいいますと。今とても、お腹が痛うございまして…」
ふと、横を見るとオミがブンブンと顔を縦に振り、ヒコはニヤニヤと笑っていた。
ふむ、と息を吐くと彼らの言いたいことがわかった。
「安心してくれ、私の団子はお腹にも効く」
そうじゃねぇよ!という魂の叫びが聞こえたような気がした。
そう言った瞬間、タケルの顔がますます青くなってゆく。
え、いや、そういう訳では…と小さな声が口からか細く漏れた。
ふむ、どういう事だろうか、なぜタケルは遠慮しているのだろうか…少し考えて閃いた。そうか!
「そうかそうか、タケルも優しいな、自分だけ特別扱いは不要という訳か!よし、なら皆にも食べてもらおう、何、団子は沢山ある」
そう言うと皆は口を揃えて静まった。
登場人物
犬飼健
種族、獣人
髪の毛は茶色のショート、犬耳、赤目。
真面目が取り柄、忠実で常に主のことを思っている。
愛用はふた振りの双剣。
また犬ゆえか俊敏性が高い。
主人のきびだんごを食して腹を下したことがある。本人の純粋な笑顔が怖くて未だに言えていない。
楽々森彦
種族、獣人
髪の毛は黄色のくせっ毛セミロング、目の色は黄色。
尻尾が絶えずフニフニと動いてる。
動きやすそうな薄い服装をしている。
性格は自由奔放、手癖が悪い。
顔、性格は魔理沙に似ている。
然し、脳筋。
一時的になら鬼をも凌駕するほどの怪力を操ることが出来る。
素手の格闘を好む。
犬飼健を弄るのが日課
留玉臣
種族、獣人
黒髪のロングで一筋赤い髪の毛が通っている。目の色は茶色。見た目も妖力も至って普通の人間と類似・同格の為、人の中に紛れると発見は困難。
性格は冷静、だが、焦ると凄く速口になってオーバーヒートする。素は案外、黒い。
所謂、ドジっ子。
攻撃方法は弓を用いた《砲撃》
空を飛ぶのも得意。
三人の尻拭いをするのが仕事
彦五十狭芹彦命
種族、人間だが、実際は妖に近く、人々の念、俗に言う願いを元に召喚されたという事から英基、俗に言う「勇者」に近い。
髪の毛は透き通るような白色のロング、目の色彩もそれと同じ、どうやら能力の影響らしい。
今回の異変の主犯格
真面目そうに見えて実は一番真面目じゃなかったりする。
正義感はあるが目的がない限り自発的に動こうとしない。
サバサバしているように見えて案外、優しいタイプ。
趣味は料理でその腕前は部下達の腹を毎回唸らせている程。
実は過去の幻想郷でも度々召喚されてる。
その時にとある庭師や紫、先代巫女とも面識がある。
因みに得物は刀を使用するが本人は刀よりも弓の方が得意。