第16話〜最終決戦〜
ジリジリと特有の音と共に紫電が散った。
まるで今までとは別人の様な、いや、絶えず霊質が変化するミコトに私は今までに味わった事の無い恐怖を感じた。
ーくれぐれも手を抜くなんて思わないでちょうだいー
その紫の言葉が重く伸し掛る。
ゴクリと喉がなり、意識をミコトに集中させる。
「咲夜、魔理沙を連れて安全な所まで逃げて」
「れ、霊夢!」
「魔理沙…わかるわね、今のアイツには正直、私達が束で掛かっても勝てないわ」
「そんな…そんなんなら余計ダメだ。一度逃げよう、そうす」
「ダメよ…コレはケジメ、それにね私には切り札があるのよ、だから大丈夫」
そう言うと魔理沙の頭をポンと撫でた。
「咲夜、お願い」
すると咲夜ははぁと息を吐いた。
「魔理沙、ゴメンなさいね」
「待て、咲っ」
そう言うと咲夜は指を鳴らした。
すると咲夜と魔理沙は消え、文字通りこの場には私とミコトの二人っきりになった。
「待たせて悪かったわね。みこと」
そう言うと私はミコトに向かってお祓い棒を向けた。
ミコトはそんな様子をどこか懐かしいような目で眺めた。
「貴女には最早勝ち目がありません。この私の霊質を見ればよくわかるでしょう?」
「そんな事どうでもいいわ、私は巫女として貴女を倒すだけだから」
そう言うとシュンという静かに空気を切るような音と共にミコトに肉薄した。
ミコトと超至近距離で目が合う。
だが、ミコトは静かに手を虚空に伸ばすとその手にふた振りの双剣が握られ、ソレで軽く一閃し
た。
「その剣は…」
咄嗟に避けるがミコトは一歩踏み込み、素早い連撃を加えた。
頬が掠りパックリと切れ血が流れ出す。
シャキシャキシャキシャキと目に追えない程の斬撃に近付くのをやめ、結界を出しながら後ろへ飛んだ。
たが、パキンという音と共に結界が綺麗に両断されると、ミコトの周りに数多の光輪が出現した。
私がいた場所に数多の光線が突き刺さるのと
亜空穴で逃げ切るのはほぼ同時だった。
一瞬の間をあけミコトの後ろにつくと
スペルを叫んだ。
「宝符・陰陽宝玉!」
だが、ソレはパシッという軽い音と共に軽々と片手で受け止められてしまう。
ちぃ、と毒づき手を抜こうとするが万力に挟まれたように動くことができない。
「もう満足しましたか?」
そうミコトが言うとそのまま軽々と投げ飛ばした。
スパァンと異様な音を立てながら民家に突き刺さる。
轟音を立てて家を破壊しようやく止まった。
咄嗟に結界を放ったものの一瞬で木っ端微塵だ。
タケルの魔を払う声、双剣
ヒコの怪力
オミの射撃
なるほど、仕掛けは理解出来た。
アイツの能力は他人の能力を使う程度の能力ね……
ゲホッと咳き込みながらミコトを見る。
「今ならあなたを見逃します…貴女には万が一にも現時点では勝ち目はないですから」
そう言うと双剣を手から離した。
瞬間、双剣は光の粒子となって消えた。
今ならまだ見逃す、そう言いたいのだろうか。
私は口元の血を袖で拭うとお祓い棒を振った。
「確かに今の私には勝ち目はないわ…ええ、今の私にはね」
そう言うとミコトは目を細めた。
「今のままですか…なるほど、どうやら逃げる気は無いようですね?」
「ええ、だって私は巫女だから」
そう言うと私は懐からお札を取り出した。
ミコトはその様を見て、そうですかと一言呟き消えた。
その瞬間、首を刈らんとばかりに私の横に肉薄していた。
私はソレを見るまでもなく呟いた。
「夢想天生」
「ッ、夢想天生!?」
その単語を聞いた瞬間、ミコトは驚嘆の声を上げた。
だが、その手は止まらない。
そして、剣が私の首に触れるのはほぼ同時だった。
が、剣は私を捉えることは出来ず、空振りをする。
ミコトは一瞬怪訝な顔をすると目にも留まらぬ斬撃を残し、距離を置いた。
「まさか、奥の手がそれですか?たかが、ダメージを受けないだけで貴女の攻撃は私には掠りもしませんよ。」
そう言うとミコトは双剣を構えた。
「そんなこと知ってるわよ、ええ、確かにこのままでは私はいつか必ず負けてしまう。コレは無限では無いからね…でも、もしも夢想天生が本当は違う効果を持つものだとしたら?」
ミコトは怪訝な顔をして私を睨んだ。
「見せて上げるわ…私の奥の手を!」
そう私は言うと私は1枚のお札を構える。ソレは一瞬でどす黒いオーラを放つお札に変わり、私はソレを地面に叩き付けた。
お札からまるで黒煙が昇るように妖気が漏れる。
死なないでね?
そう短く付け足すとニヤリと笑った。
「ラストワード、真・夢想天生」
そう言うと地面に染み付くようにして黒い魔法陣が展開される。
そして、中心から生み出されるのはタールの様なドス黒い妖気。
ソレはまるで意思があるかのように私を足からゆっくりと呑み込むと私の意識はまるで塗りつぶされるかのように消えていった。




