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東方 幻桃鬼想  作者: 幻茶
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第1話〜プロローグ〜




「あら、貴女は随分と落ち着いているわね」


そう目の前の女は呟いた、見た目こそ少女…もとい姉のような見た目だが、その見た目には似合わない程の貫禄が滲み出ていた。それこそ正真正銘の化け物である私から見ても、だ。


あらかた「仕事」が終わったからかその顔には穏やかさが浮かんでいた。


大妖怪、八雲紫やくもゆかり


賢者とも呼ばれ幻想郷を創設した偉大なる大妖怪、因みに五大老と呼ぶのは厳禁だ…五大老は別に年老いてるという意味ではないのだけれど…


仮にもし口走ろうなら…ここいら一帯を埋め尽くす人形がきのお仲間入りすることになるだろう。


彼女から呼び出されるのはそう少ない事じゃない、今回は仕事だが、時たまお酒を呑むということで呼ばれる事もある。もしかしたら友達…そういう関係に近いのかもしれない…


だが、実際の所、私はこの女が少し苦手でもある、理由は簡単、この女は平気で嘘をつくからだ、というより何が嘘で何が真のことか理解すら出来ない。元より何を本気で言ってるのか分からない恐怖がある。


瞳を見て真実を知ろうにも逆に見透かされるほどの底知れぬさ。


常にニヤニヤと不気味な笑顔を浮かべるその顔。


鬼という種族上嘘が付けない私にとってはとても相性が悪い、ある意味天敵みたいなものだ。

まぁ、かれこれ幻想郷が出来る前からの仲だし悪いヤツでは無いんだけどね…


ホッと息を吐きながら立ち上がると足元にくたばる人形がきを容易く踏み潰す。


それはまるで砂のお城のように容易く崩れる。


うえ、汚いなぁ…


既に息絶えており悲鳴は無く、熟れたリンゴを潰したような独特な感触が伝わった。

ゲフッと大きなゲップをすると手に持つ酒を一呑み


「んん?落ち着いているわけじゃないさ…ただ、今回の異変はちとヤバいからなぁ〜」


グビッと瓢箪を揺らす。


今回の異変…ソレは前回とは違った種類のモノだ…ソレも不味い意味で


紫はこの局面でも酒を呑み続ける友に溜息をつくと綺麗な黄色の髪を揺らした。


「今回は霊夢を動かせない、いえ、動かさないと言うべきかしらね…十三年前の事は貴女も聞いたことぐらいあるでしょう?」


博麗の巫女が動かせない…ソレは幻想郷を守る者を動かしてはならない、否、動けば下手をすると幻想郷が滅びてしまう。


…なるほど。聞いたところでは確かに十三年前と同じだ、いや、むしろ「代わり」がすぐに見つからない分厳しい。


それだけ今回の異変はシビアなのだ。


「んーどうせ放っておいてもこのままでは幻想郷は滅びてしまうさ、なら方法は一つさ」


そう言うとビシッと紫に向けて親指を立てた。


「私が動けばいいのさ!なに、私は四天王だぞ?私がケンカで負けるなら同族だけさ、それにな」


そう言うと酒を一呑みし紫に後ろを向けてヨロヨロと歩き出した。


「私はワクワクしてるんだ。アイツと闘えることがな。」


「ハァ…その鬼特有の考えには賛同しかねますわ…」


「んぁ?私が負けると思ってるのか?ヒクッ」


「………」


その何処かの呑んだくれの様な歩き方に紫は思わずため息をついた。


その歩き方はとても四天王と呼ばれた者の歩き方ではない、けれど決して侮れないほどの力を持つ少女を紫は静かに見守った。


「貴女が強いのはよく知ってるわよ」


暫くしてから紫は消えた友人の事をふと思いボソッと呟いた。


「…けどね、貴女も私の愛する人なのよ」


その声は誰にも聞こえなかった。





「たく、霊夢も少しは怖がったりしたらどうだ?万が一はこの魔理沙様が助けてやるんだからさ。」


そう言うと横の魔法使いはつまらなそうに金髪を揺らした。


その姿に私ははぁ、と息を漏らした。


「私はこの幻想郷の巫女よ?こんな事で驚いてられないわ…第一ここでどう驚けっていうのよ」


其処は深夜の人里だった。


いきなり真夜中に魔理沙が神社に駆け込んできた時は何事かと思ったけど、


まさかの肝試し…怒らなかった私を褒めて欲しい。


「たく、風情が無いな〜霊夢は…」


風情?この女は何言ってんだか、とうとうキノコの食いすぎで頭にキノコでも生えたのだろうか?


「ふん、こんな所来るぐらいなら優香おはなばたけランドを昼間お散歩するほうがよっぽど楽しいわよ、何なら今から行ってみる?きっとこんな時間からでも歓迎してくれるわよ。」


そう言うと魔理沙の顔が見る見るうちに真っ青になった。


「そっ、ソレはご遠慮するんだぜ…」


結局、一番怖がってるのは魔理沙じゃない。そう溜息を漏らすと提灯を持つ手を揺らした。


ふう、と夏の涼しい夜風に火照った身体を冷ますと歩き出した。


それにしてもやはり暗闇の中を提灯一つで歩くのは確かに雰囲気が出るものだ。


なにせ足元も見えないし、第一にここは幻想郷、なんの冗談無しに妖怪が襲ってくる可能性もある。


ふと、二日ぐらい前の人食いガマを思い出して肩をさすった、あれはヌメヌメしてて気持ち悪かったなぁ。


そう軽く考えると提灯を揺らしながらザッザッと歩く。


その時、魔理沙がキャッと短い悲鳴を上げて暗闇を指差し私に抱きついた。


「ちょ!?いきなり危ないわね!」


そんなこんなで魔理沙を怒りながらちゃっかりその珍しい声を堪能する。


…貴女そんな声出るのね。


すると魔理沙はブルブルと震える指で暗闇を正確にはその地面を指した。


「なっ、何か居たんだぜ…」


ウルウルと涙を浮かべる魔理沙を見て思わずニヤッとしてしまう。


可愛いところがあるじゃない、魔理沙ちゃん?


「あら、貴女そんな声出るのね、私初め…」


そう言いつつ近寄り、地面に倒れてる何かに足を止めた。


怪しく提灯の光を受けて光るそれはまさに血痕。

大量の血痕がまるで水溜りのようになっていて光を反射しているのだ。


その瞬間、胸の中をなんとも言えない不快感が襲う。

それを一言で言うなら予感だ。


そして段々と提灯で照らされていくソレは…


「なっ!?」


「れ、霊夢!?こ、これって」


そうガクガクと震える魔理沙を振り払うと


私はすぐさま駆け寄った。


そこに倒れていたのは…


「萃香!?しっかりしなさい!今すぐ永遠亭に…萃香!萃香!!」


血だまりに沈む鬼の四天王こと伊吹萃香いぶきすいかだった。


登場人物


八雲紫やくもゆかり

他に類を見ない珍しい一人一種族の妖怪。

この幻想郷を創ったとされ、大賢者とも言われその名に恥じない圧倒的なまでの力と知恵を持っている。

また増え過ぎてしまった物の怪などを旧友と共に間引きし絶妙なバランスを保つ様に活動している。

十三年前の異変についても深く知っているようで……


伊吹萃香いぶきすいか

鬼であり、山の四天王の1人。

幻想郷ができる前から紫と交友があった。

鬼という種族故にその力はもはや隔絶したもので天蓋を砕く事すら片手間でしてのけた。

とある事が原因で地上から消え、そしてまた幻想郷に戻ってきた。

今回の異変の犯人をほぼ本能に近い形で誰かを推測していた。


霧雨魔理沙きりさめまりさ

魔理沙は魔理沙だぜ。

まぁ、強いてなら単なる魔法使いだ。

あと霊夢の友達な!

ああっ、あと異変解決なら私の方が得意だぜ!


博麗霊夢はくれいれいむ

幻想郷で巫女さんをしている少女。

神社の掃除をしながらお茶を飲むのが仕事。

あと本人曰く副業で幻想郷の治安維持も行っているが本職は言うまでもなくこちら(異変解決)である。

紫曰く何か果てしないものを持っているらしい。


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