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97.条件

 次の日、早朝に五和を起こして学院に連れて行く。


「お兄ちゃん、早すぎだよぉ〜」


 まだ寝ぼけているようで、ピトッと腕にしがみついている。


「学院に入りたいって言ったのは五和だろ。ほら、学院長室に着いたからシャキッとしろシャキッと」


「はーい……」


 何回かパンッと音が鳴る程顔を叩いて、ようやくちゃんと目が覚めたようだ。


「失礼します」


「し、失礼します!」


 目が覚めたからか今度は緊張し始めている。まあ、学院のトップだしな。しょうがないか。俺の場合はもうフレンドリーな感じだから緊張しないけど。


「こんにちは、シンさん。そちらが妹のイツワさん、ですか?」


「はい。今日は昨日お話した件について伺いに来ました」


「ど、どうも、五和です……」


「ああ、そちらに座ってくださって結構ですよ。あと、そこまでかしこまったり、緊張する事もないですよ」


「は、はい」


「あー、リーさん。五和は偉い立場の人間っていうのが苦手なんだ。多分、終始このまんまだと思う」


 こいつ、これで頭が良かったり、運動も出来たりと俺と違って高スペックで、賞なんかを取ったりするが、そのせいで上の立場の人間と会う事も多く、理由は知らないが苦手になったらしい。


「はぁ、そうですか。ま、私としてはどちらでもいいので大丈夫ですがね。それで、イツワさんを学院に編入させるかどうかですが、こちらは大丈夫です」


「ふむ。こちらは、ね。別に問題があるってわけですか」


「はい。他の先生方から、色々と言われちゃったんですよ。うちのクラスに入れたい!って」


「あー、クーの時は事情が事情なんであれですけど、今回はマジの家族、しかも妹ですからね……。自分の肩書きがどんな影響を及ぼすかはある程度理解してます」


 勇者って色々と便利な部分もあれば不便な部分もあってなかなかにめんどくさい。


「それで、今回はアカネさんからの編入希望でもない為、他のクラスを抑えてアカネさんのクラスに入れるって事が出来ないんですよねぇ」


「それで、どうするんです?」


「何かの勝負事で決めようとしたんですけど、シンさん相手だと他の教師が勝つ可能性が皆無でどうしようかと悩んでいたんですが、カレンダーを見て思い付きました」


「まあ普通にやったらほぼ負けなしですからね」


 相手がチートじゃなければ。


「現在、どのクラスも臨時クラス替えで生徒が入れ替わっています。その生徒達を競わせれば良いんじゃないかと思いました」


「まあ学院らしいとは思いますけど、それって例えば、今アカネのクラスから出してるマリが勝った場合、五和が入るのはアカネのクラスですか?それとも臨時クラス替えによって替えられているクラスの方ですか?」


「今回の場合、臨時クラス替え後のクラスが引き取る事にします。つまり、マリさんが勝った場合、イツワさんを引き取るのは別クラスですね」


 げっ……。マジかよ……。他のクラスはどんな生徒が出るのか知らないが、マリより強いなんて事はないはずだ。


「それ、普段アカネのクラスで授業受けてたマリがかなり有利じゃないですか?」


「普通なら勇者が教えてるから、という理由で有利になるはずですが、アカネさんの場合、その、教えるのが下手と言いますか」


 あ……。そういやアカネってダメなんだったか……。


「ですので、そこまで差が開くという事は無いんじゃないかと。たとえ1ヶ月シンさんが受け持っていたとしても」


 いえ、その、だいぶ差が開いてると思います。時間的には1ヶ月でも、ちょっとしたズル("自己空間"のこと)のせいで1ヶ月以上教えてる事になってるんですけど。


「……期日は?」


「そうですね。まだ他の先生方に伝えていませんし、生徒にも伝えていません。調整の時間もあるので1週間後、でしょうかね」


 うちに来ている生徒はハナだ。武闘大会でマリと引き分けている。その引き分けも日本人としての性能あってこその事。1週間で、マリに勝てるようにしてみせようじゃないか!


「わかりました、1週間後ですね。それでは、失礼します」


「あ、し、失礼します!」


 俺が出ようとして、慌てて五和がついてくる。


 さて、まずはハナにやる気を出してもらわないといけないな。

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