96.楽しい家庭
「ただいまーっと、仲良くやってたか?」
「うん!お兄ちゃんが話してくれなかった事とかも聞けたよ。いつの間にロリコンになっちゃったの?」
「いったい何がどうなって俺がロリコンになった!?」
訳がわからんぞ。ちょっと書類整理をしてきただけで妹が兄をロリコン呼ばわりしてくるようになるとは。
「クーさんに聞いたよ!こんな幼女の身体にしたのはお兄ちゃんだって!」
「それは学園に入れるために外見をある程度幼くする必要があった訳で、こいつは私とか言ってたから雌だろうと思ったし、近くに置いとかなきゃいけないから男より女の方がいいと思っただけだ!他意はない!」
だって、なぁ?嫌だろ、男を監視する為に近くに置いとくとか。
「それ、本当?」
まだ疑われているようだ。しつこいなぁ。
「本当だ、本当。俺はロリコンじゃない。お兄ちゃんの言う事が信じられないのか?」
「うーん……。分かった。信じる」
ふぅ。こう言えば大抵折れてくれるから助かる。
「ヘレン、飯出来てるか?」
「はい、出来てます」
「なら飯にするか」
飯の準備が出来ているようなので夕飯だ。今日から五和も増えて5人での食卓だ。それに合わせてかいつもより少しだけ量が多くなっている。
「ヘレン、これ一人で作るの大変じゃないか?」
「いえ、大丈夫です。ここに来る前はこれより多く作っていましたし、家事の方もこちらより多くこなしていましたから」
エリは領主という立場だし、そりゃ、そうなるのか。見た事はないけど、領主の家とかかなり広そうだからな。
「まあそうならいいが。一応俺も家事はそれなりだし、五和は結構出来る方だから頼ってくれよ?」
「はい、分かりました。ありがとうございます、心配してくださって」
誰かが言わないとずっと働いてて倒れそうだからな。
「お兄ちゃん、私が家事出来るの知ってたの?」
俺が五和は家事が出来る事を知ってることに驚いていた。なんでよ。
「五和に少し教えたの俺じゃん。そっから自分でやってったけどさ」
「あー、そういえばそうかも」
「というか家事に限らず、五和が出来るのは大抵俺が教えたやつだろ」
「運動は違うけどね!」
「大抵って言っただろうが!」
俺だって日本じゃ運動が全く駄目だったのは覚えてるよ。この前体験したしな。
「仲良いですねー」
俺たちのやり取りを見ていたエリが食べるのをやめてこちらに話しかけてきた。
「まあ兄妹だしな。普通こんなもんじゃないか?」
「話によるとそうじゃないみたいですよー?」
「そうなのか?」
「どうも仲はそんな良くないみたいですよー」
「あ、日本でも私とお兄ちゃんみたいに仲良い兄妹ってそんないないよーって友達に言われた事あるよ」
そんな事言われてたのか。というか、これが普通じゃないのか。でも、兄妹で仲悪いってどうなんだ?同じ屋根の下にいる訳だし、仲良くしてた方がいいと思うんだがなぁ。
「小僧、食べないなら貰うぞ」
「あっ、ちょっ、おい!」
話に入ってこなかったクーが俺の皿にあった肉を掻っ攫っていった。
「俺の肉が……」
こちとら今日いつもより動き回ったんだぞ。王都に行ったりしてな。
「お兄ちゃん、私の分けてあげるから」
「シンさん、私の分けますよ」
二人が同時に俺に肉を寄越してきた。その後、少しだけ目を合わせる。
「私のお肉だけで大丈夫だよね、お兄ちゃん?」
「いえ、私のお肉でいいはずです、シンさん?」
その後、言葉の圧力が俺を襲ってきた。な、なんて答えれば正解なんだ、この質問は……!?
「二人共食事中なんだから喧嘩しちゃダメだよー」
「う……わかりました、エリ様」
「うー!」
エリが仲裁に入ってくれ、なんとか事が収まった。
「なんか、楽しいなこういうの」
みんなでわいわいしながらの食事。一人増えるだけでかなり違う。