94.邪神の目的
「で?話って何だ?」
「はい。クーちゃんの事です」
む……。
「クーちゃんって多分ですけど、黒蛇、ですよね?」
「まあ、そうだな。元黒蛇だ。言葉が話せるんで生かしておいたんだ」
「だからですか……。なんとなーく、いつも視線感じてたんですよね……。それに、話し方も同じだし、なんか前の私を知ってるような感じがしてたんですよ」
「クー本人には気付いた事は言ったのか?」
「いいえ、確証がありませんでしたから言ってませんけど」
「今確認してそうだと分かった訳だけど、これから言うつもりは?」
「んー、まああります。すぐにとはいきませんけど」
そうか。なら、これは俺が口出すべき問題じゃないだろうな……。
「分かった。……っていうか、一つ聞いていいか?」
「何です?」
「確かクーはハナと会ったのが50年程前って言ってた筈なんだが、それでその身体の子の名前がハナ、なんだろ?成長しないのか?」
「あー、それですか。しませんよ。"憑依"のせいですね。口調も外見に合わせてるだけで別に、しようと思えば変えれるぞ」
あ、そうだ。どうせならあれも聞いておくか。
「なあ、ハナを召喚したのは誰なんだ?もういないかもしれないけど、確かめておきたい事なんだが」
「口調については特に無しか……。私をですか。えっと、邪神ですね」
「は?」
「邪神ですって。そこのアカネさんが封印した邪神。流石に何体もいるはずないですし」
邪神が、ハナ、というか遠藤 彩音を?いったい何故?
「なんで邪神があなたを呼ぶわけ?最低でも50年以上も前に」
「さあ?私にも分かりませんよ。それ、私が一番初めに質問して答えてくれなかったものですし」
邪神……。日本人、いや異世界人の方がいいのか。異世界人を呼んで何かしようとしていたのか?宣言通りの世界征服が目的?なら別に異世界人を呼ばずとも出来る筈だが……。
「アカネ、邪神の目的が何か、分かるか?」
「いいえ、分からないわよそんなの。私は邪神が世界征服を宣言したから倒そうとしたけど無理で封印した訳だし。それに会話もしてない」
「邪神自体は会話は可能でしたよ」
会話は可能、しかしアカネとの時はしなかった。いったい何故だ?必要がなかった?勝てるからとでも思って何も言わなかった?
「駄目だ。まだ分からない事だらけで狙いが分かんない」
「50年以上前からの狙いでしょ?もしかしたらもう終わってるとか、あるんじゃないの?」
「ああ、その可能性も勿論ある。だが、事態を楽観視して、防げたものが防げなくなるなんて事もあり得る。逆に絶対に何かある!なんていって何もないという可能性だってある。だから、何かあるかも、くらいに考えた方が気を張り詰め過ぎないでもし何か起こりそうな時にすぐ動けるはずだ」
「そうですね。私も自分が危険になるなんて状況がもしかしたらあり得るかもしれませんし、警戒はしときます。クーちゃんは守れるくらいには」
一番はクーか。まあ、だろうな。俺の中の一番は、誰、なんだろうな。五和か、ヘレンか、クーか、エリか、それとも、この4人以外の誰かか。どうなんだろうな。
「私も勇者活動の時に探ってみるわね。まあいつになるかは分からないけどね」
「いや、探ってくれるだけでもありがたい。ハナ、邪神はハナ以外に誰か呼んだりしたか?」
「分かんないですね。すぐにどっかに行けって言われたから適当にぷらぷら遊んでただけですし」
むぅ……。他にいればそいつにも聞いてみたかったが。異世界人限定で情報を伝えるのも俺から発信だけだからなぁ。改良してどうにか会話出来るようにしてみるか。
「ありがとう。役に立った。そんじゃ、家に帰るかね」
「あら、私、貸しを使おうと思ってたんだけど」
「どーせ書類整理だろ。手伝おうと思ってたから貸しはそのままでいいよ。五和を家に送るだけだしな」
「そ。なら行ってらっしゃい」