93.自己紹介と物質生成
予約投稿忘れてました
教室に転移すると既にアカネとカズキが教室にいた。早いな。
「よっし、役者は全員揃った訳だし、早速やりますか」
「えっと?お兄ちゃん、この人達は?」
おっとっと。その前に自己紹介が必要か。
「じゃ、全員自己紹介からな」
「私はアカネよ。西條 茜。同じ日本出身。ま、私は案内してる時にある程度話したからこんなもんで」
アカネって西條 茜なんて名前だったのか。そういえば日本名聞いてなかったな。
「それじゃあ次は僕ですかね。僕はカズキです。橘 和希。同じ日本出身ですね。よろしくお願いします。シンさんには助けていただいた事があります」
「私はハナです。えっと、これ、日本名言わないといけない流れですよね?あ、はい。遠藤 彩音です。シンさん達とは色々ありましたが、今は仲良くしてます」
「おい、ちょっと待て。何だ、遠藤 彩音って。お前名前ハナじゃねぇか」
「だから言いたくないんですよ!私はこれでもこの中で一番長く生きてるし、ハナって名前はこの子の名前の事!」
あぁ、そっか。なるほどな。"憑依"か。
「えっと、その、私は五和です。鴛野 五和。よろしくお願いします!」
「へぇ、鴛野って言うのね。なら、シンは鴛野 シン?」
「俺は鴛野 新一だ。シンイチだからシンだ。別にいいだろ。ちょっと変えたって」
「ま、それは人の勝手だから別にいいんじゃない?それで?自己紹介も終わった事だし、やるの?」
「と、思ったんだが、先にさっきアカネに話した事をみんなにも伝えとこうと思うわ。王とヘンリは馬鹿じゃないが、今回みたいに下の奴らが暴走したらどうなるか分かんないからな」
「んー、まあ確かにねぇ。王とヘンリしかまともなのいないし」
との事で、俺が王都の城であった事をカズキとハナにも話した。ハナは別に何とも思ってないのか、知らん顔をしているが、カズキは怒っているようだ。
「僕、王都潰したくなってきました……」
「そこまでか……」
「あ、もしやるなら手を貸しますよ。私が創った重力魔法なら制圧なんて簡単ですし」
勘違いだった。顔に出てないだけでハナも相当怒ってたわ。
「ま、その話はまた今度ね。あっちが暴走して来るにせよ、すぐに動くって事は無いはずだし」
「ああ。今日集まってもらったのは五和の"物質生成"能力を試すためだ」
「まあ何となく理解してましたよ。日本人集めた時点で」
「ですね。僕達はもし何かしらの危険要素が発生した場合の保険ですよね」
おお。みんなよく分かってるじゃないか。
「付き合わせちまって悪いな。今度、みんなにはお返しをするから。それで勘弁な」
「あら、貸しをくれるなんていつものシンとは違うわね」
「まあ、家族のためだしな」
五和の為にやってもらうのだ。少しばかりは、な。
「それじゃあ五和。能力を使ってみてくれ」
「う、うん!で、でもお兄ちゃん。どうやって使うの?」
「うーん、そうだなぁ。俺の時はナビみたいな、コンソールっていうのか?そんなのが出てきて最初はやってたなぁ。今はほとんど使ってないけど」
「メニューって言った方が分かりやすいのでは?」
おお、それだそれ。メニューだ。
「メニュー、ですか。ゲームみたいな?」
「そうそう。とりあえずそれを想像してみて出てくるようならそれに従ってやってみろ」
むむむ、と唸るように目を瞑って念じている。いや、目を閉じたら見えないんじゃ……。
「あ、出来ました」
え?っと思って周囲に何か出来たか見たが特に何も出来ていない。
「何が出来たんだ?」
「これです!入浴剤です!」
「「「「え?」」」」
五和の手には入浴剤が握られていた。しかし、この場の五和以外の全員が、「なぜ入浴剤……?」と思ったのは間違いないだろう。
「な、なぁ、五和。なんで入浴剤なんだ?」
「え?お兄ちゃん、私がお風呂入る時いつも入浴剤使うの知ってるでしょ?だから今日も入る時に使おうかなって思って。こっちに入浴剤があるか分かんないから」
いや、一回家行ったじゃん!テレビとか冷蔵庫とかあっていいの!?って思うようなものとか見てたじゃん!
「五和、その、入浴剤は家にあるんだ」
「あ、そうなの?なーんだ、じゃあこれ要らないね」
そう言うと五和の手から入浴剤が消えた。
「生成出来て、生成させた物は任意で消せる、って能力でいいのかしら?」
「まあ、今の見る限りは多分そうだろうな」
「あ、なんかねー、レベルみたいなのがあるよ!」
「レベル?」
「うん。入浴剤はレベル1。1だと簡単に出せるみたい!」
ふむ……。万能かと思ったけど、制限はあるのか。
「他には何が出せるんだ?あぁ、レベル1の中でな」
「うーんと、お兄ちゃんの学生服とか、お兄ちゃんの帽子、お兄ちゃんの服、お兄ちゃんの下着、お兄ちゃんの読んだ事のある本、お兄ちゃんの人形、お兄ちゃんの髪の毛、お兄ちゃんのーー」
「ちょっと待て!?」
こ、怖い、怖いぞ。ほらみんなも「えっ?ちょっ、何言ってるの?」って感じになってるから!
「え?まだたくさんあるけど、いいの?」
「お兄ちゃんの、以外のにしようか、な?」
「うん、わかった。えっと、『お兄ちゃん専用』っていうのも無し?」
「無しで頼む……」
何だよ『お兄ちゃん専用』って!怖いよ!何出てくるか想像も出来ないよ!
「えっとねー、りんごとか果物がいっぱいでしょー、後は野菜とかお肉とか、食べ物系だねー」
「なんか、レベル1の中は統一性がないのね」
「確かにそうですね。シンさんのだったり食べ物だったり」
「でも何かしらの共通点はあるんじゃないです?」
「んー?うーん、あ!多分、沢山触れた物!お兄ちゃんの物はとりあえず全部触った事あるし、食材は料理するから触るし、入浴剤もお風呂入る時に触るからいっぱい触ってるよ!」
なんか今おかしな事が聞こえた気がしたが、気のせいだと思っておく。追求したくない。
「って事は何回も触れればレベルが下がって出しやすくなるって事か?」
「多分そうだと思う!」
うーん、まあ使える能力か。
「ま、今日の所はこんなもんか」
「そうね」
「あ、シンさんちょっと話したい事が。2人で。いいですか?」
「まあいいが。というわけだ。ちょっとハナと話するからみんなは戻ってくれていいぞ」
「分かりました。僕も生徒を待たせてるので、これで失礼しますね」
おお、もうまともに教師をやってる。凄いなぁ、カズキは。
「私は聞いちゃダメなの?」
「ダメってわけじゃないですけど、あまり関係ない事ですよ?」
「なら聞かせてもらうわ。どうせ戻ったらまた書類と格闘しなきゃいけないからここでゆっくりしたいし」
そうやって延ばし延ばしにするから後々苦労するんだろうが。