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91.怒り

いつもより長めです

「これはいったいどういう事だ!」


「いきなりこちらを襲って来たため、自己防衛のために剣を取りました」


 王が兵士に問い詰めるが、兵士は飄々と嘘をつく。


「シン殿、この兵が言っている事は本当か?」


「いいや、嘘だ。俺は王様と話した後直ぐに城を出ようとここに来た。そしたらここに兵がいて、俺に剣を向けて来た。それが真実だ」


「そんな嘘が通用すると思うな!」


 お前が言うか。


「ふむ。ヘンリは何処だ?」


「騎士団長ならば、今は書庫にいるかと」


「ならば直ぐに連れて来てくれ。すまないが、シン殿にはもう少し待っていてもらいたい」


「この件についてのことがはっきりと王様に伝わるというならちゃんと待つさ」


 今ここで待てるかなどと言えば、俺が嘘をついた事になる可能性が高くなる訳だしな。


 程なくして1人の兵士がヘンリを連れて戻って来た。


「王様、それにシン殿まで。いったいどういった御用件でしょうか?」


「うむ、今しがた兵とシン殿に何やら問題があったようでな。どちらが嘘をついているのか調べたいのだ」


「なるほど、そういう事ですか。いいでしょう。では、兵の方から。起こった事を話せ!」


「は、はい。シン殿がここに来た途端、我々を襲って来たため、剣を取り、自己防衛をしておりました」


 兵が言い終わるとヘンリからビビビビビッという音が鳴った。


「どうやら、嘘を付いているようだな」


「そ、そんな事は御座いません!」


 こちらにもビビビビビッという音が鳴る。


「お前達に対する処罰はまた後でだ。それではシン殿、説明していただいてもよろしいですか?」


「ああ。俺は王様と話した後、この城をすぐに出ようとしてここまで来た。で、ここに来た途端に兵が剣を持って待機していて、俺に剣を向けて来た。以上だ」


 俺の方にはビビビビビッという音は鳴らなかった。嘘発見器、みたいなものだろうか。


「王様、どうやらシン殿の方は嘘は付いてないようです」


「どうやら、そのようだな……。シン殿、済まなかった」


「別にいいが、今回の件、多分王様の責任だぞ?」


「ああ、分かっておる。大方、シン殿をどうにか捕らえ、人質にする事で、私と召喚者を会わせようとした結果なのだろう」


 おお、よく分かってるじゃないか。まあ、それくらいしか今行動する理由は無いんだが。


「私が命じていない事とはいえ、兵の暴走を止められなかった私の責任だ。今回の件、私がシン殿の家族を利用しようとしたと思われても言い逃れは出来ない。この首を落としてもらって構わない」


「王様!そこまでする必要は御座いません!その者が何をしたと言うのですか!」


 兵が王の言い分を聞いて声を荒げる。どうやらどうにかしてでも俺を悪者にしたいらしいな。何でそこまでしたいんだろうか。理解に苦しむな。


「じゃあ逆に問うが、お前達は何をした?」


「私達は王様を守るため、国を守るために尽力している!」


「まあそうなんだろうな。この王都や他の場所が平和なのもそのお陰なんだろうよ」


「ああ!」


「だけどな、それは俺たちを呼んで、俺たちが頑張った結果だ。お前達のものじゃない」


「なんだと!!」


「俺たち、異世界人を呼んで魔王やら龍王、邪神の相手をさせたのは何故だ?お前達にその力が無かったからだろう。今、アカネが全ての災厄を振り払う事が出来たからこそ、みんなは安全に暮らしていられる。もし、アカネが全ての災厄を振り払えていなかったら?お前達は何をする?また、新しく異世界人を呼んで災厄を相手にしろと命令するだけだろ。ここで活躍したのは異世界人である俺たちであってお前達じゃない。そこを履き違えるな」


 今の状況は全て自分達が頑張ったお陰なんて思ってる奴は全てやって見せてもらいたいものだ。魔王に挑むのも、龍王への説得も、邪神の封印も。


「そ、そのくらい分かっている!しかし、貴方も自分を異世界人という枠組みに含めて色々やった様に言ったが、何もしていないだろう!」


「少なくとも、テラミスに雪崩れ込む筈だった魔物大暴走スタンピードを事前に解決したが?それは功績に含まれないと?」


「当たり前だ!魔物など、襲って来た所で返り討ちに出来るだけの力は皆持っている!」


「あっ、そう。俺がテラミスの危機を未然に防いだ事は当たり前、そう言うのか。なら、アカネがやった事も当たり前か?俺がテラミスの危機を未然に防いだように、アカネは各地の魔物大暴走スタンピードを防いだそうだぞ?俺たちが各地の安全を守る事が当たり前なのか?」


「こ、この地に住む者が安全に暮らせるようにするのは当たり前だろう!」


「お前達が一方的にこちらに呼んで、こちらに住むんだから安全を確保するのは当たり前?何言ってやがる。この地の安全を、この国の安全を守るのはお前達騎士団であって俺たちじゃないだろうが」


 俺たちが何でもやるのが当たり前なら騎士団なんて無くたっていい。


「俺たちは強制的にこちらに呼ばれたが、この世界の人達に触れ合い、ある程度愛着を持った。だからその人達を守るためにやってるんだ。その行為を何もしない奴が当たり前と言うなら、俺たちは国から手を切るぞ。別に、お前達と一緒にいる必要はない。俺たち異世界人は異世界人で新しい国を作ればいいだけだ。それを出来るだけの力をみんな持ってる。魔物やその他の災厄なんか自分達でどうにかしろ。俺たちは関わらない。そもそも、俺たちはこの国、この世界がどうなろうと知ったこっちゃないんだからな。俺たちは違う世界の住人なんだから」


 自分達の世界を守りたいなら自分達で勝手にやれ。俺たちをもう巻き込むな。


「俺がアカネと一緒に教師をしているのも、全て俺の判断だ。アカネにも、学院長にも辞めたい時に辞めてもらって構わないと言われている。それでも辞めないのは生徒達に愛着を持ったからだ。だからこそ、俺は生徒達を様々な災厄から守る決意は固めてる。こっちで国を作るなら生徒達や家族だって連れて行く。それくらいはする気はある。俺たち異世界人に優しく接してくれる良い人達がいるのを知っているからな」


 王も良い人ではあるのだろうが、ヘンリ以外の部下が悪すぎる。


「お前達が考えを改めないようなら、俺は異世界人全員にこの事を今、伝える。それくらいの事はこの世界にある魔法を少し改変すれば出来る事だからな」


「くっ……」


「シン殿、すまない。兵がシン殿の触れてはいけない部分に触れたのだろう。どうか、怒りを鎮めて欲しい。私達はシン殿や他の異世界人と争う気は無いのだ。共存したいと、そう思っている」


「これは王様が謝る事じゃない。それに国のトップがそう頭を下げるものでもない。俺が謝罪を要求してるのはこいつらであって王様やヘンリじゃないんだ。それに、王様やヘンリなら俺は作った国に招きたいと思ってるからな」


 なんだかんだでちゃんとアカネとの約束というものは守ってエリにちょっかいを出してくる事は無いみたいだからな。まあ出した時点で俺が敵に回るが。


「それで、どうなんだ。謝るのか、謝らないのか」


「……………済まなかった」


「しょうがないから許してやる。王様とヘンリに感謝しろ」


 はぁ………。マジで面倒な事だった。


「俺はもう帰る。ヘンリは兵の教育をもっとしっかりした方がいいぞ。王様は部下の行動を把握した方がいいな」


「そうですな……。今後はより厳しく行くことにします」


「私の首を取らなくていいのですか?」


「あの誓いは王様が利用しようとした場合だ。今回の件は王様の命令じゃなく、こいつら馬鹿の独断だろ。そんなんで首を取ったら、ヘンリまで敵に回るだろうさ。別に勝てない訳じゃないが、その行動に移すのは俺自身が許せない。だから、首は取らない。けど、貸し1だ。もし、何か頼る事があったら無償でやってもらうからな」


「シン殿がそれでいいと言うのなら、それでいい。この貸しが、大きな事に使われなければいいがな……」


「ま、大抵は俺が何でも出来るから安心してくれよ。そんじゃ、俺は帰る」


 もう隠すのも面倒なので"転移・改"をその場で使ってテラミス魔法学院まで移動した。

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