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85.召喚術

「自習と言っても何やってるかわかんないから、少し他の奴見てくるな」


「あ、はい。それじゃあ私は何となくで素振りしてますね」


 昼休憩が終わり、面倒だからそのまま自習にしたが、他の生徒が何をしているかが気になる。一応クラスの責任者(仮)だ。


「えっと、何やってるんだ?」


 まず遠目に見て何やってるのか全く分からなかったレンの所に来た。だってずっと棒立ちしてるだけなんだもの。


「……練習。他の属性の」


 はぁ……。


「座学の時、ちゃんと聞いてたか?」


「……聞いてませんでした」


 だぁぁぁぁぁ。これ、後日座学のテストするか……。それでどこ把握出来てないか調べよう。アカネに相談だ。


「反省はちゃんとしたんだな?」


「した!それはちゃんとした!もう自分の強さに溺れたりしない!上を目指す!」


 まあ、いいか。


「まず何の属性がいい?」


「風、かな。今使える火魔法に一番相性がいいと思うから」


「そうか。なら、頭の中で風が吹く様子をずっとイメージしてろ。それで、火球を出す感覚を持ちながら、風を意識するんだ。今日の所はずっとそれをしてろ」


「わかった」


 ふぅ。まあこんなもんだろ。風魔法がどのくらいで覚えられるかは努力次第だな。


「えーっと、エリ、何やってんだ?」


 続いてはエリ。なんか変な魔法陣を紙に描いている。なんかで見た事ある魔法陣なんだが、いったい何だったか……。


「召喚術の練習です!」


 すぐに頭を殴る。俺、悪くない。


「何を馬鹿な事言ってんだ!?召喚術なんてもんやろうとすんなよ!忘れたのか!?また面倒な事が起きるかも知れないんだぞ!?」


 あー、もう!次また何かやらかしたら普通に招集かかるぞ。しかも2回目だから拒否権なんて得られない。


「だ、大丈夫ですよ。国令で、使用は制限されてますけど、今回はちゃんと許可取りましたから」


「許可……?」


 国令で制限された召喚術の使用を許可させるなんて事が出来るのは……アカネか!


「アカネか!面倒な事許可しやがって!」


「全責任は私が負うから大丈夫って言ってましたよ?」


「その責任者が現場にいないのがいけないの!はぁ……。ほら、やるならやるぞ。今描いてるのは使っても人とか出てこないよな?」


 これでまた誰か召喚なんて事したら許されないから。安全確認は絶対に必要だ。


「そこは大丈夫だよ。ここの魔法陣の対象の所に人とか魔物とかは全部無しってしてあるから!」


「それなら、まあ、多分、大丈夫、か?」


 不安だ。そこはかとなく不安だ。何故だろう、嫌な予感がする。


「ちょっと貸してくれ」


「あ、うん」


 魔法陣を隈なく見つめる。まだ描き途中だが、特に不安要素は無い。召喚術師に変身して確認しても特に問題は見当たらない。


「すまん、悪かったな」


「いえ、今回は失敗しないようにって気を付けてるので、見てもらえて良かったです」


 うん、今のままなら絶対に失敗しないだろう。そう確信出来るほど、魔法陣はしっかりと出来ていた。だからこそ、不安だ。何かしらの謎要素で何かが起こる、そんな気がしてならない。


「完成しても少し待っててくれ。ヘレン呼んでくる」


「いいですけど、ヘレンに邪魔させたりしないでくださいね?あの子、私が何かしようとすると必ず止めてくるんですから」


 いや、それはエリが悪いと思うんだ。ヘレンは安全だったり不安要素が無い事、害が及ばない事なら基本許してくれるだろうから。




「というわけで、ヘレン。不安だからついて来てもらったが、どうだ?」


「これは……多分、成功します。失敗する様な事はないと思いますよ?今回はアカネ先生が全責任を負って下さるんですよね?それならやっても大丈夫だと思います」


 く……。ヘレンはこの不安を感じなかったか。ならセリーヌだ。セリーヌなら精霊だし、このもやもやっとした不安的なものを感じ取ってくれるはずだ。


「セリーヌ、セリーヌはどうだ?」


(私ですか?私は召喚術というものはあまり存じていませんからこうとは言えませんが、微精霊達も特に何かある様子ではありませんし、成功するのではないでしょうか?)


 セリーヌもか……。な、ならハナはどうだ!いったいいつ、誰が召喚したのか知らないが、ハナも日本人だ!ハナならこの不安を感じてくれるはずだ!今言ってて気付いたけど、後でハナの事も確認しなきゃだな。




「というわけでどうだ。なんか分かるか?」


「こう、はかとなく不安な感じがあります。なんて言うんでしょう、こう、もやもやっとしたような、ふわふわっとしたような。言葉に出来ないですね……」


 やはり不安に感じるか!


「えっと、さっきから沢山聞いてますけど、そんなに心配ですか?魔法陣も見てもらった通り、失敗はないと思うんですけど……」


「いや、その、な。なーんか嫌な予感がするっていうか、不安っていうのかね。なんか、するんだよな……」


「私もです……。あの、アカネさん、呼べません?なんかあってもあの人いたらどうとでもなりそうな気がするんです……」


 ハナから提案を出されて、すぐに職員室に向かう。アカネは書類と格闘していたが、事情を説明、何とか引っ張り出す事に成功する。……残りの書類の数が凄かった。山のようにあった。今回呼び出した訳だし、手伝えるのは少しだけ手伝ってやろう。


「どうだ?なんか、不安な感じとかしないか?」


「エリちゃんには悪いけど、するわね……。言葉に出来ないような感じが……」


 アカネもするか……。今の所反応してるのは日本人だ。これは、まずいんじゃないか?


「エリ、やめないか?」


「さっきからシンさん達は心配のし過ぎですよ!今回は失敗はあり得ません!大丈夫ですから、見てて下さい!」


 くそ……折れないか……。


「アカネ、お前のせいだからな……」


「わ、分かってるわよ」


 俺、ヘレン、セリーヌ、ハナ、アカネに見つめられながらエリが召喚術を始める。


「さあ、行きますよ!」


 エリが魔法陣に魔力を流し込む。魔法陣は光り輝き、順調に魔力を溜める。


「せいやっ!」


 ボンッと音がなり、俺の変身のように白煙が魔法陣から出始めた。だいぶ煙が濃く、何が召喚されたのか把握出来ない。


「成功、したのか?」


「成功、したわね」


 俺がアカネに聞くと、どうやら成功らしい。安心してへたり込んでしまった。


「ふぅ………。じゃあ、この心配は取り越し苦労だったわけか?」


「…………そうでも、ないみたいですよ?」


 ハナが顔を顰めながら言う。何だって?と思い、白煙が上がる魔法陣の方を見ると、まだ白煙は上がっているが、シルエットは見えるくらいになっていた。


「明らかに、人、じゃないか?」


 シルエットはどう見ても、人の形をして、動いていたのだった。

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