7.策を練る
「なあ、俺の変身能力って希少なんだよな?」
「はい。文献でしか見た事がないですね」
「それなら、俺にそんな能力があるから見逃してくれっていうのは無理か?」
「そうですね……。わかりません。何分、希少な能力ですし、真偽はすぐ分かると思いますけど、それだけで許してくださるかどうか……」
ふむ……。変身には期待しない方向にしておくか。他にも策を考えないとな。
「そうだ、その国から誰か来るんだろ?そいつはいったいどの位で来る?」
「ここは国とそこまで離れていませんから……きっと5日ほどじゃないでしょうか?」
5日か……。それまでになんか思いつかないといけないのか……。俺に出来るか?まあやるしかないか。ヘレンにも頼るとしよう。
「ヘレン、何かいい考えはないか?俺はまだこっちに来たばかりだから分からないことだらけだからな」
「やはり、一番早くて確実なものが証拠隠滅なんですが……それはシンさんを殺してしまう事になりますから無しですね」
「当然だ」
「そうなると、次に良いのが先程の変身能力だと思います。こんな力がある、だからエリ様の罪をなくせと脅すのがいいかと」
なんか……ヘレンって少し物騒じゃないか?剣の扱いも相当だし。本当にメイドなのかこの子は?
「脅すのは俺が変身能力を色々と試してからだな。まだ魔物系統はワーウルフしか出来ていないから」
「そうだったんですか。でも、上位職になれれば脅しには充分だと思いますよ」
「上位職……ああ、剣聖とかあったな」
「剣聖ですか!充分すぎますよ!」
ふむ。上位職ってそんなに強いんだなぁ……。俺が変身した時はふーんってくらいにしか思わなかったんだけど。
「それでは、脅し案は完璧ですね。ですが、他にも案を用意しておいた方がいいですよね」
「だな。脅しが成功するとは限らないし」
「そうなると、次は相手が納得するようなものを提示するのがいいですかね」
納得するようなものか………。俺は無一文だからなぁ。提供出来るものなんて果物くらいしかないぞ。
「俺は果物くらいしか提供出来ないな。あそこで黒ローブがかなり食ってるが」
窓に目を向けてみれば、黒ローブがすごい勢いで果物を食べている。誰もとらないのだからゆっくり食べればいいのに。
「私達の方も色々と厳しいと思います。もし、身体を求めてきたりされたら………」
身体………か。黒ローブもヘレンもまだまだ子供だ。そんな二人の身体を求めてきたりしたらロリコン確定なんだが……。ん?子供?
「そうだ。ヘレン、親はどうしたんだ?」
子供の責任は、親の責任だ。
「あ……。その、エリ様の御家族はもういらっしゃらないんです。私の両親も、もう………」
「すまん………」
まさか二人とも両親がいないとは………。
「いえ、大丈夫です。親代わりになってくれている人ならいますから」
「そうか。ならその人をここに呼べないか?それか俺が一旦お前達の家に行く。それでその人に協力をしてもらおう。二人より三人で考えた方がいいだろう」
「わかりました。少し待ってくださいね」
ヘレンが目を閉じて両手を胸の前で組んでいる。何してるんだ?
「伝えました。すぐに来てくれるそうです。それでも時間はかかりますけどね」
「時間がかかるのはしょうがないさ。それにしても今何をしてたんだ?」
「今のは念話ですよ。距離が離れていても話が出来るので便利な魔法です」
「ああ、念話か。俺には使う相手がいなかったから試せなかったやつだな」
「私とエリ様に対してなら使えると思いますよ。エリ様は念話を使えないので、一方的にだけですけど」
あんな魔法使いです!って感じの格好してるのに念話使えないのか……。