78.デート終了
「今日はもう終わりだな」
あれから王都で回れる所は大抵行った。現在は雰囲気のいい店で夕食を食べ終えた所だ。
「そうですね。とても、楽しかったです」
「そう言ってもらえたならこっちとしても嬉しいな」
デートプランなんてなく、その場その場で行き先を決めるようなデートだったんだけどな。
「シンさんは、私のことどう思ってくれてるんですか?」
「……悪いけど今はまだそういう風には見れてない。ごめんな」
「……いえ、いいんです。シンさんが悪いわけじゃないんですから。でも、前よりは良い印象になりましたよね?」
「まあ、それはな。正直、今日は色んなヘレンを見れて楽しかったし、またどっか行きたいなっとは思ってるよ」
これに嘘偽りはない。今日感じて思った事だ。武闘大会を挟んだからずっと一緒だった訳ではないからまた何処かへ行きたいと思っている。
「それは……みんなで、って事ですか?」
「ん?いや、ヘレンと二人だけど。まあ何処へ行っても今回みたいにあいつらが出張って来そうな気はするけどな」
なにせあっちにはアカネがいるのだ。あいつなら行けない場所など無いだろう。どんな所へ行ったとしても付いてくるはずだ。
「そ、それって、デートの約束、ですか?」
「あー、まあ、そうなるのか。嫌なら断ってくれていいぞ?今回だってマリが無理矢理決めた事だしな」
「い、いえ!嬉しいです!また何処かへ出掛けたいです!」
「そうか。ならまた暇が出来たら行こうな。それまでには少し行ける場所の候補は増やしておくからさ」
「はい!楽しみにしてます!」
流石にまた王都っていうのもあれだし、テラミスは住んでる場所だけに既に色々行ったりしてる場所があるだろうからな。如何にかして行ける場所を増やそう。アカネに連れてってもらえば行けるようになるか。
「それじゃ、今日はお開きにしようか。明日また授業だが大丈夫だよな?」
「はい!大丈夫です!」
うん、機嫌が良いみたいだ。そこまで楽しみにしてくれているならば、今度は計画的にやってみたいな。
「それじゃ、飛ぶぞ」
店を出て"転移・改"を使用し、ヘレンと共に家に帰って来た。家には既にエリとクーが帰って来ていたが、かなりぐったりとしていた。武闘大会後はこんな疲れてなかったように見えたが、いったいどうした?
「ただいま。二人とも一体どうしたんだ?そんな疲れたように突っ伏して」
「おかえりなさい……。大変だったの……」
「主に小僧のせいでな……」
俺のせいで大変だった?何かあったかと記憶を遡ってそういえばと女性にかなり囲まれていたのと、取材がどうのこうのと言っていたのを思い出した。
「まさか、あれ二人で処理したのか!?あの人数を!?」
「そのまさかだよ……。他に助けてくれる人もいなかったし……」
「あんな状態の私らを助けようなどという自殺願望者はいないだろうの。しかし、逃げたら小僧を探しにかなりの数の人間が王都を動く。ヘレンの事を思うと逃げる事など出来るはずもなかったというわけだ……」
こっちの事を考えてそんな事をしてくれていたのか……。
「そ、その、済みませんでした。まさかそんなに気を遣っていただいていたなんて。エリ様、今度何かあれば言ってください。私がやりますので。クーもお願いします」
あちゃー、ヘレンが気にしてしまった。けど、まあ、俺たちの事を思ってくれていたわけだし。
「俺の方にも何か言ってくれていいぞ。大抵の事は叶えてやれるからな」
今回だけの特別な行使権でも与えてやろうじゃないか。
「……とりあえず、保留で」
「私もだ……」
どうやら疲れの方が限界みたいだな。
「寝るなら寝室に行け。ここで寝たら風邪引くからな。ほれ、さっさと動く。俺たちも今日の所はもう寝ちまうか」
「そうですね。あ、エリ様危ないですよ!」
エリが壁に激突しそうな所をヘレンが間一髪防いでいた。はぁ、全く。明日からも頑張らないとな。