71.決勝戦①
「えー、ステージの準備は完了致しました。マリ選手とハナ選手がいいようでしたら直ぐにでも始められますが、如何でしょう?」
「私は大丈夫ですよ」
「私も十分休めましたから大丈夫ですわ!」
二人が司会の問いに答えながらステージに上がっていく。その後に続いてアカネと俺もステージに上がる。ステージは先程より広い。先程のステージを4つくっ付けたくらいの広さになっている。魔法でやったのだろうな。
「OKも出ましたので、観客の皆様お待たせ致しました!これより決勝を行います!仮面の女選手対シン選手対マリ選手対ハナ選手!脱落していった人から順位が決定していきます。つまり最後まで残った人が優勝です!それでは、試合開始!」
司会が開始を宣言すると最初にアカネが動いた。今回、スタートは全員4隅に分かれている。アカネが向かったのは対角線上にいるハナだ。
「いきなりですか」
「ええ。悪いけど、御退場願えるかしら!」
アカネの剣を影絵の剣が受け止める。闇魔法の"影像"だな。アカネの剣の影を使ってるんだろう。
「いきますわ!」
マリの方は俺に向かって来ている。アカネの加勢に行きたいが、これは武闘大会。マリの相手をしておかないといけないだろう。
「やっ!」
「おいしょっと」
マリ相手は結界術師がいい。あのマリの鞭が解除出来るのは魔法だけだ。結界は魔法じゃない。つまり鞭に干渉出来る。
「結界術師、ですのね」
「おう。マリ相手にはこれが一番だからな」
エリとの試合で使ってるし、授業の時もちょくちょく使っていたから直ぐにバレた。ま、バレた所でどうって事ないけどな。
「さーて、いくぞ!」
結界を俺とマリの間に敷き詰める。全て"反射結界"だ。鞭でも魔法でも全て反射する。
「それでは、私の攻撃は止まりませんわ!」
おっと、地面が光った。罠に引っかかっちまったか。出てきたのは鎖だ。レンを相手にした時に使ったのと同じものだな。
「ま、俺には関係ないけどな」
"転移結界"を発動して鎖から抜け出す。転移マーキング地点は最初の隅。対象を失った魔法はすぐに解除された。
「やっぱり先生には効きませんのね」
「おう。その自己魔法拘束系のを鎖にして拘束力を強めてるみたいだが、拘束するだけじゃ今みたいに逃れる事が出来る。覚えておけ」
「ここでも、アドバイスですのね」
「そりゃ、教師だからな。生徒を強くするのに必要ならこんな舞台でも教義はしてやるさ」
ここなら観客もいてどんな事を教えているのかが伝わり、テラミス魔法学院の評判やらも上がるだろうしな。
「それと、もう一つ。罠などの設置型は相手に触れられないと効果が発揮されない。つまり」
結界で空中に足場を作る。
「こんな風に地面を足場にしなければ罠は起動されない。そこも考えておけ」
「これが一番ってそういう事ですのね……!」
うむ。罠には触れずに動けるし、魔法じゃないから鞭で消されもしない。普通に魔法を放ってきても"反射結界"が全て反射する。全て封じれるわけだ。
「相性最悪、というわけですわね……」
「ああ。まあ、結界術師自体がそんなにいないから気にすることはない。今観客の前に張られているのも魔法道具で展開した結界だしな」
結界術師になりたがる人が珍しいからな。基本4種類の魔法なら誰でもつかえるのだから。それに仕事をする上で魔法を使えた方が有利なため魔法の方を覚えて欲しいと親は思うだろう。
「ま、マリはこの状況をどうにか打破して俺を追いかけてこいよ。俺は、あっちに参戦しないといけないからな」
見ればアカネが押してはいるが、勝つのは難しいといった様子だ。