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66.5回戦

「今回のマリ選手とレン選手ですが、どちらもヒカリ選手と同じくテラミス魔法学院に所属しており、クラスも勇者アカネ様が教鞭を振るっているクラスだそうです!」


 うおおおおおおおっと歓声が響く。それ程までにアカネの存在がデカイって事なんだろうな。アカネの教え子達がどんな戦いをするのかが気になって仕方がないんだろう。


「アカネはどっちが勝つと思う?」


 さっきの話の続きから隣にいるアカネに聞いてみる。


「私的にはレンが勝つと思うわね。1ヶ月前に戦ってたら勝つのはレンだもの。でも、シンがこの1ヶ月でどれだけの事をしたのかで結果は変わるでしょうね」


「ん、アカネはレンか。ま、俺はマリだと思うけどな」


「マリがレンに勝てるの?」


「ああ、勝てるさ。ちゃんとしっかり、レンが動いてくれればな」


「どういうこと?」


「ま、見てればわかるさ」


 マリにとってレンという相手はこの上なくやりやすい相手だという事だ。


「今日も勝たせてもらうからな」


「あら、私が勝たせていただきますわ」


「今まで一度も勝ったことがないのに?」


「それは1ヶ月前の事ですわ。私はあれからずっと成長していますの」


「それは俺も同じだ。それに、今日はアカネ先生も見てる。負けるわけにはいかないんだ」


「ほんと、アカネ先生が好きなんですのね」


 そんな会話が聞こえてきている。風魔法で声を拾っているからであり、普通は聞こえないけどな。


「それでは!第5回戦!開始!」


 司会が開始を宣言するとレンとマリは同時に魔法を展開、魔法の撃ち合いを始めた。どちらも詠唱は省略されている。


「魔法名だけで魔法が使えるようになってるのね」


「ああ。そこら辺は必須だろうからな。レンは元々出来てたが、種類が増えてる」


「確かに戦闘中に詠唱なんてしてたら狙われるわね」


 俺やアカネなんかは元から出来てたから関係ないけど、あいつらは違うからな。実際バトルロワイアルでも詠唱してるやつは他の奴に狙われてすぐにリタイアしていたし。


「このまま魔法で撃ち合っててもいいだろうが、そうすると確実にレンは負けるぞ」


「そうみたいね」


 レンは魔法をひたすら撃っているだけだが、マリにはその魔法を迎撃しつつ反撃、さらに罠を仕掛ける余裕がある。


「マリがよくあそこまで出来るようになってるわね」


「クーを抜いて今クラスで一番強いのはヘレンだ。その次がシュン。そして次に来るのがマリだからな」


「……そこまで強くなってるの?」


「俺のおかげでな」




 レンは罠の存在に気付いていないが、魔法を全て落とされ反撃されている状況からこのままでは不利だと判断したのか前に出た。


「せいやっ!」


 迫り来る魔法を魔法と"スラッシュ"で対処しつつ距離を詰める。後1歩踏み込めば剣が当たる、その間合いに入ろうとした瞬間、地面が輝き、レンは地面から飛び出した鎖に拘束される。


「なんだっ、これ!?」


「私の魔法ですわ。自己魔法の"鎖縛さばく"というものですの。そういえば、レンに使うのは初めてでしたわね」


 今のヘレンは風、火、土、光の4種類の魔法が使える。これはひとえにマリが頑張ったおかげだ。


「自己魔法、だって!?いつの間に……」


「レンはいつも剣技ばかり練習していましたわね。私はいつもクーやエリに魔法を教えて貰っていましたわ。その差ですわね」


 淡々と罠に掛かったレンに対して告げるマリ、その間にももしレンが拘束を逃れてもいいように罠を張り巡らせる。


「私、鞭が好きですの。でもまだまだ腕が悪くて動いてる敵の武器はなかなか取れませんの。ですから」


 シュッと鞭を振るいレンの手に当て武器を落とさせる。そして鞭で武器を取り上げるとそのままステージ外へ出してしまった。


「このように動かないようにすれば簡単に取ることが出来ますの。あ、その鎖ですけど魔法を撃ち込めば外れますわよ」


 マリのその言葉にすぐに火魔法を鎖に放つが拘束は破れない。


「ただし、火魔法以外なら、ですわ」


「っ!?……クソッ……」


 レンはまだ火魔法しか使えない。暇な時間さえあれば剣技を練習し、アカネに教えてもらった火魔法は練習していたが、少し上級が使えるようになったからといって他の魔法の練習を疎かにしたせいだ。


 バトルロワイアルでは人が多く誰かが近くにいることが多かったから剣でなんとか出来た。だが1対1の場合は違う。必ず最初に距離が取られる。最初にレンが魔法を撃っていたのはアカネに教えてもらった魔法だったから自信があったんだろう。少しでも態勢を崩せたりしたら剣で決める、そう思っていたに違いない。


「あなたは剣に偏り過ぎていますわ。それがこの結果ですわ。少しは違う事を学びなさいな」


 鎖を解除し、風魔法で思いっきりレンを吹き飛ばす。剣はなく、魔法も効かないとわかったレンはなす術もなく魔法を受けた。そして、そのままステージ外に飛んでしまい勝者が決まる。


「勝ったのは、マリ選手だぁぁぁぁぁ!見事な手前でレン選手を圧倒!主導権を握ってレン選手を完封しきった!」


「な、マリが勝っただろ?」


「え、ええ。まさか自己魔法まで使うなんて思わなかったわ」


「マリはな、自分に得さえあれば何でも利用するんだ。さっき言ってたレンの練習とかも、相手はこればかりだからこれを封じればってな感じで観察して対処法を考えてる。火魔法以外を練習せず、使用してるとこも見た事がないから使えないと判断し、鎖に火の耐性を付けた。魔法も俺以外に何でも使えるクーや基本4属性を使えるエリなんかに聞いてより理解を深めてる。だからこそ勝つ。ま、必然だったってことだ」


「凄いわね……。私が教えてた時とは大違いだわ」


「本人は変わってないって言ってたけどな。見て盗めるものは全部盗む。ずっとやって来た事だって。親が商会をやってて元教師もいたから色々と教わってたんだろうな」


「はぁー、みんな1ヶ月でよくここまで成長したわね」


「お前が集めてきたんだろ」


 1ヶ月でっていうが一応"自己空間"を使ってやってた事もあるので1ヶ月以上なんだがな。


「それでは、第6回戦に移りましょう!お次はシュン選手対ハナ選手!」

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