63.2回戦
「まずはヒカリ選手の紹介を。ヒカリ選手はテラミス魔法学院の生徒さんだそうです。テラミス魔法学院といえば、かの有名な勇者アカネ様が教鞭を振るっている人気の学校ですね。最近新しくもう一人勇者様が教師になったと聞き及んでいますね」
俺の事ですね。1ヶ月経てばそのくらいの情報が外に出るか。
「なんとヒカリ選手は勇者アカネ様が教えている生徒さんだそうです。これは期待が高まりますね!」
俺も教えたけどな。
「続きまして、仮面の女選手の紹介を。といっても、ほとんど情報が無い為紹介出来るような事が御座いません!本名や経歴など一切不明!しかしバトルロワイアルでの戦いぶりからかなりの実力者だということはわかります!勇者アカネ様に鍛えられている生徒さん相手にどう戦うのか、見ものですね!」
仮面の女こそがアカネだからなぁ。ヒカリも災難だな。初戦でアカネと当たるなんて。
「それでは、2回戦!始め!」
司会のから開始の合図が入ると、すぐにヒカリの姿が消えた。
「おおっと!?ヒカリ選手が消えてしまいました!」
光魔法の光を屈折させて姿を見えなくさせる"インビジブル"という魔法を使ったのである。
「見えなくても、魔力の反応で居場所はわかるわよ!」
アカネは魔力の反応を頼りに見えなくなったヒカリめがけ木剣を投げる。しかし、木剣はそのまま何かに当たることもなく、地面に落ちた。
「え!?」
「シン先生にその事は教えていただきました……。そこで少し手を加えました…」
ヒカリが"インビジブル"を使った後に使ったのが光魔法の"陽炎"である。"陽炎"は魔力を周囲にばら撒き揺らめかせるものだ。"インビジブル"を使っても分かってしまう魔力の反応を"陽炎"でばら撒いた魔力で隠し、自分の居場所を完全に分からなくさせる事が出来るのだ。
「シンもしっかり教えてたって事ね……。なら私も少し解放しようか」
瞬間、アカネから感じる魔力の反応が強くなった。ピリピリと強い衝撃が肌に伝わってくる。アカネが勇者の仕事で学院を離れる前に相手をしていたからわかる。あれは、自分の力を引き出している時の魔力だ。
「まさかヒカリちゃんがここまで出来るようになってるなんてねぇ。1ヶ月で頑張り過ぎよ。ま、私よりシンの方が教えるのが上手かったって事か」
「はい。シン先生の授業はすごくわかりやすかったです……」
ヒカリが会話しながら魔法を構築しているのがわかる。多分、アカネも分かっている。
「だろうねぇ。私ってここではそこまでの苦労をした事が無かったから。的確なアドバイスとかしてあげられなかったもん」
「基本、先生と戦うだけでしたからね…」
「うん。私が出来そうな事がそれくらいだったからね。けど、今ひとつアドバイス出来ることがあるよ」
「え?」
気付いたらヒカリの"インビジブル"も"陽炎"も準備していた魔法も解けていて、場外に出されていた。
「それはね、これは圧倒的強者には通用しないって事よ」
アカネは俺に何をしたのか見せなかった。俺が瞬きをした瞬間を狙って。この武闘大会の中で唯一自分を倒せるであろから。
「……ありがとうございます。もしかしたら、今度は1発でも当てられるんじゃないかって思ってました…でも、やっぱり先生には敵わなくて、先生は凄いですね」
「まあこれでも一番有名な勇者だからね。これくらいは出来ないと。それに、私でも負けそうなのが、ちゃんといるからね」
全てを出して、倒せるか分からないアカネからそんな事を言われちゃ、頑張るしかないな。絶対に倒してやる。
「第2回戦、勝者は、仮面の女選手!私達には何が何やらですが、それも武闘大会の醍醐味!さあさあ、続いて第3回戦にいきましょう!次はシン選手対ノーティス選手です!」