表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/151

57.見られていた

 朝食を食べ終え、賑やかな王都を散策するも、どうにも気になる事がある。


「なぁ、視線感じないか?」


「視線ですか?感じませんよ〜」


 現在、俺とヘレンは手を繋いで色々と見回っているからか、ヘレンの機嫌がかなり良い。


「ならいいんだが……。お、ヘレン。宝石屋があるぞ。行ってみるか?」


「宝石、ですか?見てみたいです!」


 宝石屋と書かれた看板を見つけ、ヘレンと一緒に入ってみる。中にはルビーやアメジスト、エメラルドなど色々な種類の宝石が飾られていた。


「わぁぁ凄いです!とても綺麗です!」


 どれも色鮮やかで綺麗で美しい。が、その分値段もお高い。


「ヘレンは何か欲しいやつはあるか?」


「え?」


「買ってやるよ。でも、さすがに1つにしてくれな」


「いいん、ですか?」


「おう。今日はデートだからな。何かプレゼントをするのは当然だろ」


「ありがとうございます!」


 そう言うとガバッと身体の向きを変えて1つ1つ真剣に考え始めた。そこまで悩む必要も、あるのか。石言葉。そんなものがチラッと見えたからな。花言葉の石版なんだろう。さて、ヘレンが考えてる間に話をつけてくるかな。



「決めました!ローズクウォーツにします!」


「ローズクウォーツか。えっと、石言葉は………『恋愛』か」


「はい。私はシンさんを諦めるなんてしませんので。それに、4年待って欲しいと言われましたけど、シンさんから来てもらえるように頑張りますから!」


「お、おう」


 どう反応していいのかわからずにそんな曖昧な返事をしつつ、会計をしてもらう。


「あれ?これって……」


 ヘレンが受け取ったのはローズクウォーツでできたブレスレットだ。宝石屋に置いてあったのは全てその宝石単体だけで、アクセサリーにもなっていないものだった。なので、アクセサリーで買えたり、アクセサリーにしたりは出来ないかと掛け合っておいたのだ。


「一応、ブレスレットにしておいた。指輪だと剣を持つから邪魔になるだろうし、ネックレスはそれがあるからな」


 本当はネックレスをプレゼントしたかった。そしてかけてあげたかったという思いがあったりする。


「あ、ありがとうございます!」


「別にいいって。言ったろ?プレゼントだってさ」


「それでも言わせてください。ありがとうございます」


 その後は音楽団の演奏を聴いたり、即興劇を見たりと楽しい時間を過ごし、今度は服屋に行こうとなったんだが。


「シンさん、これとこれどっちがいいと思います?」


「う、両方似合うと思うぞ……」


「そうですか。なら試着してきますね!」


 そう言って小走りで試着室に駆け込んで行った。はぁ……。この試着の時間だけが今のところあの地獄のような質問を回避出来る唯一の時間だ。どうにかならないものかね……。そんな風に気を抜いていると背中に衝撃がきた。誰かとぶつかってしまったのだろうかと思い後ろを振り返ってみても誰もいない。


「んー?」


 一瞬訝しみながらも、ぶつかってすぐ逃げてしまったのだろうと思って試着室の方を向いた。すると、さっきよりも大きな衝撃が背中に襲いかかり、少し前屈みになってしまう。絶対に何かあると思いつつ後ろを見てもまた誰もいない。そして、後ろを向いた事で前が不注意になったのか、何かに足を引っ掛け体勢を崩し、そこにさらにまた大きな衝撃が襲ってきて完全に前に倒れこむようになってしまった。


「っててぇ。何なんだいったい……」


 そして、倒れ込んだ先というのが。


「あの、シンさん?何かあったんですか?」


「ああ、ごめんな。特に問題は、な、かっ、た、よ………」


 試着室だった。それもヘレンが使用中の。しかも、名前を呼ばれ、自然といつもの様に目を合わせようとヘレンの方を向いたのがいけなかった。そこに映し出されたのは白い下着姿のヘレンだ。すぐに目を逸らすも、脳裏に白い下着姿のヘレンが焼き付いて離れない。


「あの、出来れば、その、恥ずかしいので出ていてもらえるといいんですけど……」


 ヘレンの申し出にそうだ!と思いつつ出ようと腰を上げ足を動かそうとするが、動かない。まるで何かに押さえつけられているかのような感覚がある。


「ちっ……。ヘレン、ちょっと後ろに下がってくれ」


「えっ?あ、はい」


 俺の言葉に何かを感じたのかすぐに下がってくれた。ありがたい。


「さて、いったい何の目的でこんな事したのか、吐いてもらおうか!」


 高速で魔法使いに変身し、ヘレンを含まない様に"自己空間プライベートルーム"を発動する。


「ここでは俺が設定した効果が影響される。ここに入った事のある御前達ならよーく知ってるよなぁ?」


 現れたのは、3人の生徒。マリ、エリ、ヒカリである。


「透明化の魔法を使ったようだが、ここは今、魔法無効化の効果を設定してある。発動されていた魔法も例外なく無効化だ。さて、話してもらおうか?」


「あ、あの、その、わ、私達で盛り上げようと、その……」


「い、今まで進展がなかったからどうせならと思ったのですわ………」


「……わ、私は二人の話を聞いて、その、応援しようと……」


「はぁ………。あのな、別に見てるだけなら俺だって気にしなかった。ヘレンは気付いてなさそうだったしな。だが、今回のはやり過ぎだ。あれで俺がもし別の更衣室に入ったりしてたら俺は犯罪者になっちまう。そこら辺までちゃんと考えてたか?」


 あのずっと気になっていた視線はこいつらだろうな。俺たちが王都に入ってからずっと見られていたし。


「その、すみません……」

「ごめんなさい……」

「悪かったとは思ってますわ……」


 ま、ちゃんと反省してるみたいだし、今回は許してやるか……。後でヘレンには謝らないとな。


「で、だ。協力者は誰だ?昨日までテラミスにいた御前達がここに来れるとなると、手段はある程度絞れるが」


「そ、それは……その、アカネ先生、ですわ」


 やっぱりそうか。ここまで来るには馬車等の移動手段を用いても1日では無理だ。となると、必然的に魔法、それも転移がある空間魔法が使えないといけない。そしてただの転移では自分しか移動出来ないが、他の人も連れて行ける"転移・改"を編み出すまたは知っている必要があり、俺は"転移・改"をアカネに教えていた。


「で?何人だ?まさか御前達だけって事はないんだろ?」


 今回はヘレンの着替えがあるという点を考慮して女子だけで編成されたと俺は思っている。ならば、他の男子勢とミミ、クー、スズが来ていて何か企んでいる可能性が高い。クーあたりは絶対に来ているはずだ。男子勢はあまり興味は無さそうな気がするが。


「その、全員来てますわ……」


「全員って、クラス全員?」


「はい……」


「はぁ……」


 揃いも揃って何やってんだか……。


「今後はちょっかい出してくんなよ。まあ、これから俺は武闘大会だからちょっかいを出そうとしてもヘレンにしか出せないし、御前達はヘレンにはちょっかいを出さないだろうが」


 俺が武闘大会と言った辺りでピクッと三人が反応を示した。おい、まさか……。


「……武闘大会には誰が参加した?」


「……全員です」


「まさか……アカネもとか言ったりしないよな?」


「先生も含めて、全員です……」


 こいつら………。というか優勝がかなり厳しくなったぞ。何してくれてんだあの野郎。


「全員に伝えとけ。大会で当たったら俺は本気で倒しに行く。手加減無しだ。優勝は俺がするってな。それじゃ、解放するぞ」


 指をパチンッとならし、"自己空間プライベートルーム"を解除した。と、同時に俺の近くに下着姿のヘレンと、マリ、エリ、ヒカリが出現する。


「え!?エリ様!?それにマリにヒカリまで!何でいるんですか!?」


 突然現れたマリ、エリ、ヒカリに驚きを隠せず、大声を出してしまうヘレン。ちょっ、そんな大声出したら……。


「お客様?どういたしました?」


 ピシャッと仕切りを少し開けて伺って来る店員。間一髪のところで"転移・改"で店の入り口に飛んだ俺は無事脱出成功。変身で服装を元に戻しつつ、ヘレンを回収しに行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ